夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

夏バテ、お盆ストレス解消 大根おろしが疲れた胃を助ける

しらすおろしにして栄養価アップ
しらすおろしにして栄養価アップ(C)日刊ゲンダイ

 お盆を過ぎた8月下旬から9月の初めにかけては、夏の間にボロボロになった胃腸に悩む患者さんがグッと増えます。夏の胃腸の疲れは、秋口に出てくるからです。“食欲の秋”を迎えるためには、いまこそ胃腸を整えておかなければなりません。

 胃が重い、胃がむかむかする、食欲がない、下痢、腹痛……。そもそも、どうして夏に胃腸の調子が崩れやすくなるのかを説明します。

 その要因のひとつが「お盆ストレス」です。米国の心理学者であるホームズとレイの2人は、人生に起こるさまざまな出来事の「ストレス度」を数値を用いて評価しています。「配偶者の死」を100とすると、「離婚」は73、「夫婦の別居」は65、「退職」は45……といった具合です。その中の「長期休暇」は13で、「法律違反」の11よりも高い数値になっています。実は夏休みはストレスのもとなのです。

 お盆休みは多くの人が家族揃ってぞろぞろと実家に帰省します。迎える方はお世話が大変ですし、出向く方も義理の親や親戚に気を使うなんてケースも多いでしょう。行き帰りは帰省ラッシュに見舞われ、休みが終わったらみんなグッタリ……。思い当たる人は多いはずです。

 2つ目の要因は、自律神経の乱れです。もともと、人間の体には自律神経の働きによる体温調節機能が備わっています。しかし、夏場の急激な気温の上昇に対して体温調節がついていけなくなると、いわゆる「夏バテ」の状態になります。冷房が効いた室内から急に暑い屋外に出たり、冷たいものばかり食べていると、体温を一定に保とうとする自律神経のバランスが崩れ、夏バテを起こすのです。

 自律神経のバランスが崩れると、食欲がなくなったり、体がだるくなったり、下痢をしたり、胃腸の調子が崩れます。免疫力が落ちて、胃腸炎などの病気の原因にもなります。夏に崩れてしまった胃腸のバランスは、早めに整えないといけません。

 その大きな味方になるのが「大根おろし」です。夏大根の辛みは食欲を増し、胃の粘液量を増やし、胃の運動を高めてくれます。さらに、大根に含まれているジアスターゼというデンプン分解酵素が、疲れた胃の消化を助けてくれます。酵素は加熱すると失活するので、生ですりおろして食べるのが効果的です。

 自律神経を整えて胃腸のバランスを取り戻すには、できるだけ自分ひとりで過ごす時間をつくり、ぬるめの風呂にゆっくりつかったり、好きな音楽を聴いたり、好きな香りを楽しむのも効果的です。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。