夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

ストレスを書き出せば薬はいらない

(C)日刊ゲンダイ

 これまで、夏はさまざまな精神的、肉体的ストレスから胃腸の調子が崩れやすいことをお話ししてきました。そして、夏場に起こった胃腸の不調は、秋にも大きく影響してきます。

 今回は、薬に頼ることなく、そうした胃腸トラブルを改善させる方法を紹介しましょう。

 夏場に受けたさまざまなストレスによって、下痢、腹痛、胃もたれ、おなかの張りなどに悩まされている人は少なくありません。胃カメラや大腸カメラ検査を受けても異常がないのに、胃腸などの調子を崩す状態を「心身症」と呼んでいます。

 そんな心身症に悩んでいる人に対し、「物事を何でも良い方に捉えればいいんだ。がんばれ!」などと励ましてしまう人がいます。

 しかし、これは逆効果です。世の中はやたらにポジティブ思考がもてはやされていますが、胃腸が疲れ切っている人は、いきなりポジティブにはなれません。

 心身症の治療には順番が大切です。まず最初にしなければならないのが「自己開示」です。心に葛藤を持っている人は、自分がどのストレスに悩んでいるのか自分でもわからなくなっている人が多い。そのため、まずは「ストレスの言語化」が必要なのです。

 アメリカの心身医学会で発表された研究では、本人が抱えているネガティブな記憶を短時間、紙に書き付ける行為を1週間のうち3日間連続して行い、これを数カ月続けると、気管支喘息や関節リウマチの症状が明らかに改善したと報告されています。

 週3日、1日20分、今までつらい思いをした経験やトラウマをエッセーのように書き出すだけでOK。ネガティブな経験を書き出すことによって発散し、ストレスを自己開示するだけで、ストレスと関連する慢性疾患、機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった胃腸の不調は改善するのです。

 ストレスの言語化の後は、身の回りの出来事の良い面に着目して、自分の物事の捉え方や行動パターンをポジティブに変えていきます。これを「認知行動療法」と呼んでいます。

 夜、寝る前に今日1日に起こった良かった出来事を3つ見つけ、それを紙に書き出して感謝する。この習慣を続けると幸福度が高まり、夏場のストレスによって疲れ切った胃腸の調子は大きく改善します。ぜひ、試してみてください。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。