夏バテ胃腸は秋口に立て直せ

旅行が胃腸を救う

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高温多湿な環境、冷たいものの取り過ぎ、冷房による冷え、久しぶりの帰省……。夏に受けたさまざまなストレスによって引き起こされる“心の動脈硬化”は、胃腸障害を招きます。

 ストレスにより胃腸の調子を崩す一因は、「ホルモン」にあります。ストレスがかかると、脳の視床下部という場所から「CRF(コルチコトロピン・リリーシング・ファクター)」というホルモンが分泌されます。CRFには胃の運動機能を抑え込む作用があって、胃がもたれたり、重い感じをもたらすのです。

 対照的に、CRFには大腸の運動を異常に増す働きもあります。そのため、お腹がゴロゴロしたり、腹痛が出たり、ひどくなると下痢をするようになってしまうのです。

 こうしたストレスによる胃腸の不調を抱える患者さんに対しては、トラベルセラピーを指導しています。最近、「旅行をすると健康になる」という客観的データが報告されています。

 日本の研究施設が旅行前、旅行中、帰宅後に、旅行者の血圧、ホルモン値、脳波などのデータを計測したところ、さまざまな病気の予防につながることが分かったのです。そのため、慢性疾患、軽度認知症、ストレスからくるうつ状態の人などに、旅行を奨励する医師が増えてきています。

 旅行者は、前日から幸福感や充実感が高まり、出発時にはがん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞が活性化。細胞を錆びつかせる活性酸素を取り除く酵素(SOD)も増加します。

 旅行中はリラックス時に高くなるα波が増え、ストレスホルモンのひとつ「コルチゾール」の分泌を低下させるなど、深いリラクセーション効果が表れます。胃腸の働きを弱めるストレスホルモンの分泌を、旅行が減らしてくれるのです。

 さらに、幸福感や充実感は帰宅後2日目に最高値に高まり(ピクニック効果)、それまで抱えていた仕事や家庭の悩みが小さなものに思えたり、怒りや敵意が減少したりもします。

 夏に受けたストレスで疲弊した胃腸は、秋にも不調を招きます。早い段階で回復させるため、積極的に旅行を活用しましょう。

江田証

江田証

1971年、栃木県生まれ。自治医科大学大学院医学研究科卒。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器内視鏡学会専門医。日本ヘリコバクター学会認定ピロリ菌感染認定医。ピロリ菌感染胃粘膜において、胃がん発生に重要な役割を果たしているCDX2遺伝子が発現していることを世界で初めて米国消化器病学会で発表した。著書多数。