承認新薬は年1回の投与 「骨粗鬆症」治療が大きく変わる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これまでになかったタイプの骨粗鬆症の治療薬が9月に製造販売の承認を受けた。治療はどう変わるのか? 承認されたのは、年1回投与の骨粗鬆症治療薬「ゾレドロン酸(商品名リクラスト)」。「年1回投与」というのは、骨粗鬆症治療薬以外の薬も含めて、世界で初めてだという。

 骨粗鬆症治療薬にはいくつかタイプがあるが、今回の薬は骨吸収を抑制し、骨密度を高める働きがあるビスホスホネート製剤に分類される。

 年1回投与製剤として2007年に欧米で承認を受け、日本でも10年6月から開発がスタート。近々薬価が決まり、臨床で使用されるようになる。

 知っておくべきポイントは次の通り。

■治療、通院の負担を軽減 

 ビスホスホネート製剤はこれまで、「1日1回」「週1回」「1カ月に1回」と開発されてきた。今度は「1年に1回」で済むのだから、足腰が弱り外出が容易でない高齢者や、病院が少ない地域に住んでいる患者にとっては、当然ながら負担がぐっと軽減する。

 高齢化率33%の島で治療を行う沖本クリニック・沖本信和院長は「骨折そのものは治っても、骨粗鬆症が治ったわけではないので、その治療を行わなければ何度も骨折を繰り返します。新薬であれば、寝たきりで服薬が難しい患者も、治療を継続しやすい」と話す。

■2次骨折の予防に期待

「世界115カ国で当たり前に使われていた薬が日本でようやく承認された。最も期待されるのが2次骨折の予防です」

 こう言うのは鳥取大学医学部付属病院リハビリテーション部・萩野浩部長。骨折は連鎖する。最初は、転んだ時に手をつき手首を骨折。手首の骨折が治っても、今度は、何かの拍子で椎体上腕を骨折。さらに足首、大腿骨近位部(股の付け根付近)と続く。なぜなら、前出の通り、骨折が治っても、骨粗鬆症はそのままだからだ。

 大腿骨近位部骨折に至ると、3割が寝たきりにつながる。ただちに手術をしないと動けなくなるため、特に防ぎたい骨折だ。

 一度骨折すると2次骨折する確率は非常に高い。ある調査では、65~74歳で一度骨折すると、また骨折する確率が約19倍との結果だ。しかも、1年以内など比較的早期に2次骨折を起こす人が多いことも明らかになっている。

 この新薬は、従来薬になかった利点が研究で証明されている。

「大腿骨近位部骨折で手術した後、90日以内に新薬を投与すると、新規の臨床骨折発生を抑えられ、生命予後がよくなったのです。新薬だけが研究で証明された、非常に衝撃的な結果です」

 早期で新薬を用いることで、2次骨折の予防により役立つのだ。

■副作用は発熱頻度の高さ 

 1年に1回の投与ということで「安全性はどうか」と気にする人も多いだろう。

「従来薬と比べて副作用の程度は変わりませんが、ビスホスホネート製剤ではやはり発熱の頻度が高いのが注意点です。ただ、投与後3日以内に起こり、比較的短期間で治ります。2回目の投与以降は起こらないので、最初に気をつけることが重要です」

 骨粗鬆症は、「重い物を持った時に/立ち上がる時に/起き上がる時に、腰が痛む」「身長が縮んできた」「背中が曲がってきた」「転倒してしまった」などがサインになる。ひとつでも該当するものがあれば、整形外科を受診してみるべきだ。

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