診断で異常なしでも発症 心筋梗塞「早期発見」のポイント

若い女性も危険(写真はイメージ)
若い女性も危険(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 前回は、心筋梗塞のリスク要因について紹介した。一方で、心筋梗塞のリスク要因に全く該当していなくても、突然、発症することがある。どんな場合が危険なのか?

 日本人の死因は、第1位ががん、第2位が心筋梗塞を含む心疾患だ。がんについては、「誰もが発症する可能性がある」と認識している人は多いだろう。

 しかし、心筋梗塞については「自分は大丈夫」と思っている人が結構いるのではないか? もしその理由が、「やせている」「健康診断などで数値はいずれも正常」「たばこもアルコールもやらない」といったものなら、その“自信”は撤回した方がいい。

「心筋梗塞には主に4つのリスク要因がありますが、それらは“なりやすさ”を示すもので、該当しないことが“心筋梗塞にならない”の証明にはなりません」

 こう指摘するのは、東海大医学部付属病院循環器内科・伊苅裕二教授だ。

 心筋梗塞のリスク要因は、脂質異常症、糖尿病、高血圧、喫煙習慣の4つだ。脂質異常症にはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が関係しているが、心筋梗塞のリスクを上げるのは、LDLコレステロールが高い場合になる。

■動脈硬化のリスク要因がなくても……

 ところが、心筋梗塞を起こした患者には、脂質異常症も糖尿病もなく、血圧は正常範囲で、喫煙習慣もない人がいる。

「こういった人の心筋梗塞は、動脈硬化とは関係ないものだと研究で分かってきました」

 では、何が問題になっているのか?

 ひとつは「冠攣縮性狭心症」だ。狭心症には、階段を上がるなど動いている時に症状がある「労作性狭心症」と、寝ている間など安静時に症状がある「冠攣縮性狭心症」がある。後者は「安静時狭心症」とも呼ばれる。

「労作性、冠攣縮性、ともに心筋梗塞の前兆ですが、『労作性』が4つのリスク要因によって動脈硬化が進行した状態で表れるのに対し、『冠攣縮性』は心臓に酸素などを送る冠動脈が一時的に痙攣を起こして収縮し、血流が途絶えた時に表れます。先に述べたように、動脈硬化とは関係ありません」

 つまり、動脈硬化につながるリスク要因がなくても冠攣縮性狭心症は起こり、それが心筋梗塞につながるケースも少なくないのだ。

■寝ている時に苦しくなる

 これに早く気づくポイントは、「寝ている時をはじめ安静時に胸の苦しさ、重み、息苦しさなどはないか?」になる。ただし、5分ほどで血流が再開通して症状が消えるので、病院で検査しても、画像などでは何も分からない。

「冠攣縮性狭心症で積極的な治療が必要とされるのは、頻繁に症状が出て日常生活に支障が出る場合です。特に失神も起こっているようなら、胸の苦しさが起こってからではなく、すぐに病院で調べてもらった方がいい。患者の訴えから冠攣縮性狭心症を念頭に置き、検査や治療を行います」

 動脈硬化と関係ない心筋梗塞には、もうひとつ「冠動脈解離」がある。冠動脈の中膜が裂けて血流が途絶える。動脈硬化が原因の心筋梗塞は、平均65歳で発症する男性が多いが、冠動脈解離は30~40代の女性に多い。

 こちらは前兆がなく、健康診断の結果からは全く分からない。残念ながら、積極的な予防法がなく、「心筋梗塞らしき症状が出たら、様子を見ないで速やかに病院へ」が重要になる。「こんな年齢で心筋梗塞になるはずがない」という思い込みは禁物だ。

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