看護師直伝 がん治療と笑顔で付き合う

風邪にそっくりな副作用

「ただの風邪だと思って様子を見ていた」

 これは、抗がん剤治療中の患者さんがおっしゃった言葉です。

 検査の結果、風邪だと思っていた症状は、実は「間質性肺炎」によるものと判明。肺の中にある肺胞と呼ばれる直径0.1~0.2ミリの小さな袋の壁や周辺に炎症が起こる疾患です。

 血液に酸素が取り込めなくなり、呼吸困難が生じ、悪化すると肺が硬く線維化してしまうもので、場合によっては生命の危機に陥ります。直ちに抗がん剤治療は中止され、間質性肺炎の治療が行われました。ただ、それが長引いたため、抗がん剤治療の再開が予定より大幅に遅れることになりました。

 抗がん剤治療をはじめ、がん治療で最も大切なのは、決められたスケジュール内で終わることです。それは、効果が期待される一般的な期間で設定されています。

 ところが、抗がん剤治療は、まれではあるものの副作用によって治療を中止せざるを得ないケースがあります。冒頭の患者さんが感染した間質性肺炎が、まさにそれ。抗がん剤の治療中は、骨髄抑制などで感染に弱くなっているため、風邪が悪化して間質性肺炎以外の肺炎を起こし、同じく治療中止になるケースもあります。

 間質性肺炎の症状は、風邪によく似ています。抗がん剤治療中の方にぜひ覚えておいていただきたいのは、風邪だと思っても、万が一を考えて、抗がん剤治療中の医療スタッフに症状を伝えてほしいということです。電話の相談でも構いません。その場合は、症状と共に使用している抗がん剤の名前を伝えてください。

 間質性肺炎は早期発見・早期治療が肝心。抗がん剤投与から1~2週間程度で発症するものもあれば、数週間から数年かけて発症するものもあります。抗がん剤治療後も定期受診は欠かさず、症状に気を配る。「いつもと違う」と感じたら、すぐに主治医に言う。療養日記もお勧めです。