子供は学力低下招くことも 「視力2.0は良い目」の誤解

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供の視力が「2.0」だった。「うちの子は視力が良い」なんて喜んではいないだろうか? 子供も大人も「視力の良さ」が、かえって快適な生活を奪っているかもしれない。

 視力検査を初めて受けた子供時代から、「1.5」や「2.0」など“遠くが見える視力”であれば「視力が良い」とされ、逆に近視であれば「視力が悪い」と言われてきた。そのため、どうしても「視力が良い」=「良い目」と考えがちだ。

 しかし、梶田眼科(東京)の梶田雅義院長は、「『視力が良い』は『快適に見える』こととイコールではない」と指摘する。

「患者さんが裸眼視力1.0以上で、頭痛や肩こりなどの不調を訴えたら、眼鏡などで視力の矯正を行います」

 自分の生活をあらためて思い返せば、すぐに納得がいくだろう。現代の生活では、クルマを運転している時以外は、パソコン、スマホ、書籍、新聞、仕事の書類など、手元のものを見ている時間の方が長い。

「黒板の文字を日常的に見る学生時代を除き、近場を見る機会が多い現代の生活では、近視が適している。1.0以上の視力は逆に『見えすぎ』で、『遠視』として視力矯正が必要なのです」

「良い視力」すなわち「遠視」を放置するとどうなるか? われわれは交感神経を優位に働かせて遠くを見る。逆に近くを見ようとする時は副交感神経が優位に働く。遠視の人は、近場を見た時ピントが合わず、見えにくい。きちんと見ようとするために、1日の大半を副交感神経優位で過ごすことになる。すると、副交感神経の働きが過剰になり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまう。

 交感神経や副交感神経のバランスの乱れは、頭痛、肩こりをはじめとする不定愁訴を引き起こす。

「本人は遠視に気づいていませんが、こういった人に眼鏡で近場にピントを合わせやすいようにすると、すぐに不定愁訴が消えます」

■頭痛や肩こりの原因に

 冒頭に挙げたように、子供にも遠視は悪影響を及ぼす。近場が見づらいので、教科書や本に集中できない。本人は集中できない理由が分からず、教科書を避けようとする。結果、学力の低下を招くケースもあるという。

「昔は、落ち着きのない子供に遠視が多かった。近場を見るのが不快なので、あちこちキョロキョロするなどして、落ち着きがなくなってしまうからです」

 ところが、最近はゲームの影響で、近視の子供にも落ち着きのなさが見られるようになった。子供の様子からでは、遠視か近視かが判断しづらい。もしかして……と思ったら、遠視に詳しい眼科医の診察を受けるべきだ。子供の場合、頭痛や肩こりなどの不定愁訴があっても、それをうまく言葉にできないこともあるので、自覚症状に頼ると見逃してしまうかもしれない。

 一方、“快適に見えない”悩みを抱える40歳以上の場合、緑内障、白内障、加齢黄斑変性症といった失明のリスクがある重大疾患を除き、「老眼」が始まっている可能性が非常に高い。

「老眼を軽視している人が珍しくありませんが、老眼を適切に対処しなかったために、遠視と同様に不定愁訴に襲われたり、さらに進んでうつ状態に陥る人もいます」

 遠視は45歳から60歳くらいまでの間にかなり進行する。梶田院長の経験では、老眼の状態に応じて3~4つは眼鏡を替えなくてはならないという。

 素直に老眼を受け入れれば、生活は見違えるほど楽になる。

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