歯医者嫌いも押さえておきたい「3つの歯科テクニック」

「将来」も見据えて
「将来」も見据えて(C)日刊ゲンダイ

 適切な歯科治療を受けるために知っておいたほうがいいことは?歯科医の相馬理人氏に聞いた。

①専門医を選ぶ

 相馬氏は「◯◯だから良い・悪い」といった即時評価は困難であることを大前提とした上で、「歯科も専門性はいろいろ。重症例や難易度の高い処置や治療が必要な時は、可能であればそれらに注力している歯科医を受診すべき」と話す。

 相馬氏によれば、一般的に難しい抜歯やインプラント手術は、かかりつけ医から専門医への紹介となりやすい。歯列矯正も「歯列矯正専門」と掲げている医療機関が多く、自然と専門医に当たりやすい。

 一方、虫歯が進行し歯の神経に達した場合の「根管治療」や「歯周病」は違う。専門医ではないかかりつけ医が治療するケースが珍しくない。

「根管治療は、治療の仕方などで結果が大きく変わります。不十分な処置のために再発を繰り返す患者さんは少なくない。もし専門医であれば、歯周組織再生療法など、歯を守る高度な治療を提示できるかもしれません」

②疾患によっては自費診療がベター

「自費診療」と告げられ、歯科医の金儲けの手段にされているんじゃないかと思ったことはないだろうか。しかし、これは早計だ。自費診療で高額になるのには理由がある。

 前出の根管治療を例に挙げるとわかりやすい。根管治療はいくつかの段階を経て行われるが、最も大事なのが「細菌を根管(歯の神経が入っている管)から徹底的に取り除く」こと。根管治療では最後に虫歯で欠けた部分にかぶせ物をするが、細菌除去がなおざりだとやがて細菌が増殖し、再治療が必要になる。

 再治療になると、治療成績は初回より下がる。再治療を繰り返せば歯を失うリスクが高くなる。その先はインプラントや入れ歯になるが、歯の骨のダメージがひどく、インプラントも入れ歯もうまくいかないことも。

 日本では根管治療の成功率は5割、欧米では9割といわれており、その差は大きい。理由は細菌除去の不十分さにある。

「徹底してやるなら、細菌の多い唾液の侵入を防ぐ処置や、複雑な形状の根管を拡大する高額な顕微鏡などが不可欠。治療時間が長くなり、コストもかかるため、自費診療でやらざるを得ない」

 言い換えれば、保険診療内でやるにはコストを抑えるしかなく、唾液侵入防止の処置や高額な機器への設備投資などは難しい。結果、自費診療の欧米に比べ、成功率が低くなってしまうのだ。

「『自費診療だから良い』とは一概に言えませんが、歯科では保険診療内でやろうと思えば、それなりの治療しか受けられないのです」

③“不快のない治療”を疑え 

「歯科治療=痛い・怖い」のイメージが強いからか、いい歯科医の判断基準のひとつに「痛くない・歯を抜かない」を挙げる人は珍しくない。ところが、それにこだわりすぎると適切な処置から遠ざかる。そもそも医療である以上、時として適切な処置に不快が伴うケースも少なくないのだ。

「歯石やプラークの除去では、時に出血したり痛みが出ることもあります。症状が悪ければ抜歯もやむを得ない。ところが、患者さんが嫌がるからと、医療者側が『痛みが出ない処置』『抜歯は極力避ける』を過度に意識している場合もある。そういう方針のところでは、虫歯や歯周病の予防にはつながりません」

 歯の健康は全身の健康と相互関係にあることは数々の研究で証明されている。「今」だけでなく「将来」も見据えた歯科治療を選ぶべきだ。

▽相馬理人(そうま・りひと) 「現役のドクターが推薦する理想の医師」など医療従事者による信頼度の高い医療情報を発信する「Doctorbook」代表。著書に「その歯みがきは万病のもと」。

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