“手荒れ”を軽視するべからず 痒みや湿疹には重大病が潜む

一度こじれると治りにくい
一度こじれると治りにくい(C)日刊ゲンダイ

 手がカサカサ乾燥したり痒くなったり赤いポツポツができたり……。冬に増える「手荒れ」だと思っていたら、違うケースもある。

「手がこんなふうになっちゃって……」などと言いながら、手の症状の相談に来る患者は多い。

「皮膚科でも手の疾患に詳しくない医師はいる。手に皮膚症状があると、簡単に『手荒れだね』と言われ、きちんと対応してもらえなかったと話す患者さんを多く経験します」

 こう話すのは、東京慈恵会医科大学皮膚科学講座・梅澤慶紀教授だ。

 手の主な皮膚疾患は、手湿疹、異汗性湿疹、掌蹠膿疱症、手の真菌感染症など。ひとつずつ説明していこう。

【手湿疹】

「いわゆる“手荒れ”で、家事で使う台所用洗剤などで手がガサガサに荒れた状態です。一般的に、手の皮膚症状を訴えて来院した患者さんは全て“手荒れ”と診断されがちですが、ほかの疾患であるケースは珍しくありません。鑑別が大事」

 手荒れであれば、利き手(右手)の親指や人さし指を中心に症状が出る。家事で使う頻度が高い部分だからだ。冬場に悪くなることも特徴だ。

「治療はステロイド外用薬とハンドクリーム。そして家事を少しの間は休む。治らないうちに台所用洗剤を使うと症状が再燃。こじらせてしまい、治るまで時間がかかる。ゴム手袋をしても、ゴムの刺激で症状がひどくなる人もいます」

 台所洗剤は薄めて使用するのが基本。商品によるが、手を荒らさない“適正量”は「水1リットルに対して0・75ミリリットル」など想像以上に少量。ボトルの裏面に小さく書いてあるので要チェックだ。

■赤いポツポツには梅毒の疑いも

【異汗性湿疹】

 金属アレルギーが原因で指や手のひらに小さな水疱が出ることがある。金属は、歯の詰め物の金属のほか、意外なところで食品にも含まれている。

 たとえばチョコレートにはニッケル、コバルト、クロム、マンガン、亜鉛が含まれている。

 コーヒーにはニッケル、コバルト、クロム、マンガン。こういった食事をたくさん取ることによって、血中の金属が汗の中に出やすくなる。

「食品から摂取した金属は汗と共に皮膚の表面に付着し、アレルギー症状として痒みなどを起こします。知らずに取っている人も少なくない。アレルギーを起こす金属を避けるしかない」

 手湿疹と違い、多くは夏場に症状が出る。

【掌蹠膿疱症】

 手のひらに赤い膿疱ができる。それらはくっつきあい、皮がむける。

「原因不明のものも多いですが、副鼻腔炎、慢性へんとう炎、歯周囲炎、胆石、糖尿病、甲状腺疾患などがもとで起こっている場合もあります。歯科金属や食品に含まれる金属などによる金属アレルギーも関係しています」

「チョコレートをたくさん食べすぎて症状が出た」というケースも。ステロイド外用薬、抗生剤、抗アレルギー薬、ビタミンD3外用薬などいくつかの治療法がある。

【手の真菌感染症】

 比較的よく見られるのが、ゴム手袋を日常的に使い水仕事をしている人の指の間にできる指間カンジダ症。ゴム手袋をはめた手はカンジダ菌(真菌の一種)にとって増殖に適した環境。指と指の間に水膨れのようなものができる。

「ゴム手袋を使わず、手を乾燥させることが症状改善につながります」

 4つの疾患以外で最近増えているのが、梅毒による手の症状だ。淡い紅斑が手全体に広がる。

「手の症状は、間違った薬を塗っていたりするとかえって悪化します。一度こじれると治りにくい。早めの対策を」

関連記事