皮膚を科学する

赤ちゃんのお尻はなぜ青い? 成長とともに消えるのか

 未熟なことを意味する「尻が青い」や「青二才」といった言葉の語源となっている「蒙古斑」。なぜ、乳幼児に現れて、成長とともに消えるのか。青いアザのようなものは何なのか。「新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター」(千葉県)の瀧川恵美センター長に聞いた。

 蒙古斑が見られる割合は人種によって違うことが知られている。黄色人種(モンゴロイド)では乳幼児のほぼ100%、黒人では80~90%、白人では約5%とされる。

「それは青色をした蒙古斑の出現にメラニンを作るメラノサイト(色素細胞)が関係しているからです。メラニンには黒色の『ユーメラニン』と黄色の『フェオメラニン』の2種類があり、その比率によって皮膚や髪の色が決まります。蒙古斑の色もメラノサイトが作るメラニンの色なのです」

 白人はフェオメラニンが多いので蒙古斑が出にくい。黒人は高率で見られるが、もともと皮膚が黒いので分かりにくい。最も蒙古斑の色が目立ちやすいのが黄色人種というわけだ。そのため、蒙古斑の少ない海外の地域で赤ちゃんに蒙古斑があると、虐待を疑われるケースがあるという。

 一般的にメラニンは皮膚の深い部位にあるほど青く見え、浅い部位にあるほど茶色に見える。それが乳幼児の蒙古斑の出現に関係している。

 皮膚は体表から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層になっていて、本来、メラノサイトは表皮の基底層に存在する。ところが胎児の時は真皮にメラノサイトがあり、それが徐々に表皮に移行する。その過程で一部、真皮に残ったメラノサイトがメラニンを作るため、青アザのような蒙古斑が現れるという。では、なぜ尻や腰、背中に出るのか。

「メラノサイトは、背外側に遊走して皮膚に分布する体幹部神経堤によって作られるためともいわれますが、はっきりしたことは分かっていません。2歳くらいまで青さが増していき、5~6歳で目立たなくなり、大半の人は10歳ごろまでには消えます。なぜ自然消失するかも、よく分かっていません」

 ただ、約3%は直径2センチ程度の円形の「持続性蒙古斑」が成人になっても残る。また、腕や足、お腹や胸などに生じる「異所性蒙古斑」もまれにある。このような青アザは年を取っても消えないので治療の対象になる。

 治療は真皮にあるメラニンを破壊するレーザー治療が一般的で、保険適用になるという。

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