がん難民コーディネーターに聞く うろたえないための知識

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 2人に1人が、がんになるという時代。がん難民コーディネーターの藤野邦夫氏に「うろたえないがん治療」のための知識を聞いた。

 藤野氏は、まさに「うろたえないガン治療」がタイトルの本を2011年に出版。先日、同内容を漫画を用いて構成し、がん医療の最前線を加えた新刊を出版した。

 7年経ち、改めて出したのはなぜか? それは、世界中でがん治療が大きな変動を迎えているからだ。免疫チェックポイント阻害剤など画期的な効果の新薬や治療法が続々登場し、4期でも助かる時代になってきた。

「一方で、納得できる治療を受けられていない“がん難民”は減っていない。がんで死なないためにすべき対策は不変ですが、それを知らない人が多いのです」

 強調するのは、「がんの治療では最初の治療法が全てを決定する」ということだ。最初の治療に失敗すると、やり直しはほとんどきかない。

「がんと宣告されたら、治療法を医師任せにしてはいけない。『体に何が起こっているか』『どんな治療法が実施されているか』『主治医の最初の判断に誤りがないか』『自分の病気に合った、もっと負担の少ない有効な治療法はないか』などを探らなければなりません」

■「決して諦めないこと」

 まさに情報戦だ。中でも病院・医師選びは結果を大きく左右する。私たちはつい、名前の知れた病院がベストの病院と考えがち。しかし「全てのがんの治療に優れている病院はない」と藤野氏は指摘。前立腺がんの治療は優れていても、肝臓がんもそうとは限らない。

「病院間の格差は大きい。優秀な医師が異動や転院になれば、病院のレベルが変わることもある」

 病院・医師選びで一つの確実な基準になるのが、自分のがんの治療例や手術例の数だ。

 国立がん研究センターの全国188の病院に関する発表(17年)では、肺がんの手術例の多い病院では5年生存率が70%近くだが、少ない病院では2・3%。肝臓がんでも手術例の多い病院の5年生存率は70%超、少ない病院は15・8%だった。年齢、進行度を考慮していない数値とはいえ、治療例や手術例の多い・少ないは治療成績に大きく関係すると考えるべきだ。

 これらの情報は各病院のホームページなどから得られる。インターネット上の情報は玉石混交だが、信頼できるサイトとして、国立がん研究センターや公益財団法人がん研究会などが発信しているものが挙げられる。 

 また、「海外がん医療情報リファレンス」では新着薬剤や海外の最新情報を、「『統合医療』情報発信サイト」は民間療法などの科学的根拠に基づいた情報を得られる。

「がんの情報は短期間で大きく変わる。2年以上経っているものは古い内容が含まれていることを考慮すべき」

 さらに情報収集で積極的に活用すべきは、患者の会だ。病院や医師に対する「本音の評価」や、当事者だからこそ分かる「本当に有効な治療情報」などを聞ける。自治体の役所の窓口や病院の看護師、地元のケアマネで、患者の会について教えてもらえる。

 藤野氏が一貫してがん患者やその家族に伝えているのは「がん治療を決して諦めない」こと。

「『治療法がない』と言う主治医より、新たな治療法を提示してくれる医師の方がいい。半年延命できれば、その間に新たな治療法が登場する可能性がある。そうやって、余命数カ月と言われたがん患者さんが何年も元気で過ごしてるケースを何度も見ています」

▽ふじの・くにお 海外の医学書の翻訳を機に、がん難民コーディネーターとして毎年300人前後の患者たちに無償で相談に乗っている。近著に「まんがでわかる賢い患者入門 がんで死なない」(小学館)。

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