がんと闘う人々

肝臓がん<3>4度目も新しいカテーテルで切り抜けた

石川廣司さん
石川廣司さん(提供写真)

 東京・板橋の「日大板橋病院」で8年前、「肝臓がん」の手術を受けた石川廣司さん(71歳、東京・板橋区)は2年後に再発した。担当医師から再手術を勧められた。だが、体力的にもう過酷な手術を受ける自信がない。病院を「順天堂大学練馬病院」に移し、治療を「ラジオ波焼灼療法」に切り替えた。

 2週間で退院し、自宅で静養生活を送っていた。それから丸2年を経た2015年4月、今度は「悪性リンパ腫」が再発する。最初の肝臓がん手術から6度目の入院治療だった。抗がん剤治療(R―ベンダムスチン)を受けた。

 悪性リンパ腫は半年の治療で終了したが、同年9月、肝臓がんが再発した。3度目である。7度目の入院治療で、再びラジオ波焼灼療法を受けた。それから1年を経た2016年の正月を迎えたとき、「今年は、どうかがんの再発がありませんように」と祈った。

■いったんは治療を断念

 ところが、同年暮れに無情にも4度目の肝臓がんに襲われてしまう。担当医師は、「今度の肝細胞がんは、前回(2015年10月)と同じような箇所の横隔膜近くに、2センチ以上のがんがあります。わずか1年でがんが再発するのは、その箇所にがん細胞の病巣があるのでしょう。それを完全に除去しなければなりません」と説明し、治療法として「肝動脈化学塞栓術」を勧めた。同術は、足の付け根から挿入したカテーテルを肝臓内の細い動脈にまで通し、抗がん剤を腫瘍に直接投与して死滅させるものだった。

 しかし、ここで問題が起こった。肝臓内の動脈が細く曲がりくねっているためカテーテルが通らない。担当医は経験や技術も豊富で信頼できる医師だったが、2時間も奮闘してついに治療を断念した。担当医からは「最初に手術を受けた病院(日大板橋病院)に戻って再手術を受けてはどうか」と勧められたが、断った。

 それから1週間後、その医師がたまたま参加した医学学会で、偶然にも新しいカテーテルを見つけた。それは、カテーテルをある一定のところまで進めて、先端に装着した風船のようなものを破裂させる。破裂したその勢いで抗がん剤を肝細胞の病巣に投入させる方法らしい。

 しかも、今回は前回と違う柔らかいカテーテルを使い、曲がりくねった難しい動脈内を通過させて治療に成功した。

 後日談になるが、同病院の担当医は、石川さんの治療成功を喜び、以来、他の患者にもこのカテーテルを使用しているという。

 ちなみに、先に利用したカテーテルには不具合があり、メーカーはほどなく回収した。

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