がんと闘う人々

肝臓がん<4>妻は戦友 今日が一生と思い生きていきたい

石川廣司さん
石川廣司さん(提供写真)

 昨年10月、東京・板橋区に住む石川廣司さん(71)は「肝臓がん」と「悪性リンパ腫」が同時に再発した。

 再発どころではない。肝臓がんは12時間に及ぶ大手術以降7年の間に5度目、悪性リンパ腫は再発が3度目を数える。

 この間、入院と通院を繰り返し、「抗がん剤」のほかに、主に「ラジオ波焼灼術」(肝臓がんに針を刺し、約100度の熱を通電)や「肝動脈化学塞栓術」(足の付け根から動脈に挿入したカテーテルを患部まで通し、抗がん剤を直接注入。直後にゼラチンで注入口を押さえ、抗がん剤を患部にとどめる)などの治療を受けた。

 ただ、点滴や経口の抗がん剤治療は、肝臓がんとリンパ節の同時治療で相互的な悪影響を与えないために、使用する薬品が慎重に選択された。

「恐れるほどの副作用はありませんでしたね。異常な暑さや食欲不振、便秘があった程度でしょうか」

 少ない副作用には助かったものの、肝臓がんはしつこかった。今年の4月、6度目の再発が石川さんを襲ったのである。「腫瘍の大きさはまだ1センチと小さかったようです。でも、平均1年間に1回の再発など病巣化する危険性がありまして、6月に再度『肝動脈化学塞栓術』の治療を受ける予定にしています」

■闘病を語り合い一緒に公園を散歩

 石川さんは、60代のほぼ8年間に11回もの入退院を繰り返してきた。もう、いい加減にうんざりする長い闘病生活である。それでも、がんによって石川さんの生き方が大きく変化した。

「もう一度、すてきな女性に会って、燃えるような恋をしたいね」と、ジョークを飛ばす一方で、時には煩わしく感じた夫人の存在が、共にがんと闘う戦友になっていた。

 闘病を語り合い、一緒に公園を散歩し、居間で音楽CDを聴く。時には趣味の映画DVDを2人で見ながら、声をあげて笑い合うようになった。

「いつ閉じるか分からない命です。毎日、朝起きると、今日が一生と思い、日々の生活を大切に楽しく生きていきたいと思っています」

 8年に及ぶ治療生活で、医療費はどのくらいかかったのか。

 大ざっぱな計算だが、入院費用が1回平均15万円で、総額約200万円(3割個人負担だったが、途中から70歳を過ぎて2割負担)になった。ほかに、タクシー利用の通院費が年間10万~20万円ぐらい。入院保険に加入しており、入院すると1日8000円が保障された。

 ただ、がん保険について加入を望んでいたが、40代で「C型肝炎」にかかっており、加入資格の対象から外されていた。

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