カラオケ療法

<3>好きな歌を歌うと脳血流が増え脳波もリラックス状態に

「南越谷健身会クリニック」のカラオケ教室風景と同クリニックの周東寛院長
「南越谷健身会クリニック」のカラオケ教室風景と同クリニックの周東寛院長(C)日刊ゲンダイ

 カラオケが脳を活性化させる? という話は本当なのか。

 脳神経外科学に詳しい「ルイ・パストゥール医学研究センター文理融合型先端医科学研究室」(京都・左京区)の高垣雅緒室長がこう言う。

「泣いたり笑ったりする喜怒哀楽の行為は、神経細胞が網のようにつながり合って出来る三次元ネットワーク(コネクトーム)を介して記憶、視覚、悲しみ、幸福、さらに快楽という報酬系などの高次機能中枢や、呼吸、心臓を動かす自律神経系に至るまでを刺激し、それぞれの血流を増加させ、脳を活性化します。歌うという行為はこうした喜怒哀楽を起こさせるきっかけであり、それが脳を活性化すると考えられるのです」

■歌った後は脳波がα波状態に

 このメカニズムを生かし、認知症や老化対策として、予防や治療にカラオケを活用している病院が「南越谷健身会クリニック」(埼玉県越谷市=周東寛院長)だ。

 病院の3階に「カラオケ教室」(40人収容)を設け、高性能のスピーカーまで備えて外来や病院近隣の男女住民にマイクを握らせている。毎週、定期的に開かれている「カラオケ教室」の司会者は、インストラクター教師がいて、周東院長は診察後に合流して自らも歌う。

「私自身が健康カラオケ人間で、健康に長生きしたかったら1日1曲歌いなさいと指導しています」

 こう語る周東院長は、脳の活性化とカラオケの関係について次のように解説する。

 病院が行う健康診断に欠かせない「脳波検査」がある。脳波とは大脳の働きに伴って発生する微弱な電流のこと。精神状態によって波形や周波数が異なり、大きく「α(アルファ)」「β(ベータ)」「θ(シータ)」「∂(デルタ)」の4種類に分かれる。

 心身がよい状態のときは、α波が多く発生し、反対に緊張しているときは、β波が発生している。α波はリラックスしたとき、θ波は睡眠とか、ぼんやりしているときだ。

「特にストレスが多い私たち現代人にとって、脳波をβ波からα波に変える工夫が必要です。そこで活用してほしいのがカラオケです。好きな曲を1、2曲歌いますと、脳波がα波に変わり、心身がリラックスしてきます、この脳波が変化するとき、脳の活性化もしやすいといわれています」

 実際、周東院長はカラオケで歌う人たちの「脳波」検査を実施し、データを取ってきたという。

「歌う前と歌った後の検査で、α波状態になっている人がたくさんおります。また、歌っている間はβ波とα波が交互し変動することが、脳にとってよい刺激になり、活性化してきます」

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