気付けば末期状態…症状ゼロの腎臓病で知っておくべきこと

暴飲暴食も腎臓病悪化の原因に
暴飲暴食も腎臓病悪化の原因に/(C)日刊ゲンダイ

 国内の慢性透析患者数はこの40年で18倍に増加。その理由のひとつに、慢性腎臓病(CKD)に関する認識の低さがある。埼玉医大総合診療内科・中元秀友教授に、知っておくべきことを聞いた。

■CKDとは

 腎臓の主な働きは、①尿を作り老廃物や塩分を体外に排出②血圧調整や、体液量やイオンバランスの調節を行い身体の恒常性を維持③ホルモンの産生や活性化。これらの機能が低下した状態がCKDだ。腎機能の軽度低下を含めると、全国民の6~25人に1人が該当する。

■自覚症状

「“CKDの疑いがあります”と言うと患者さんはびっくりするのですが、それくらいCKDの初期ではほとんど症状がありません。健康診断でタンパク尿、クレアチニンの上昇があっても、自覚症状はないのです」

 クレアチニンとは、筋肉で生成され、腎臓から尿中に排泄される代謝産物のこと。腎臓の力を示す指標「GFR(糸球体濾過量)」で見ると、60%を切った段階からCKDと診断される。30%を下回ると腎不全、10%を下回ると尿毒症だ。GFRの低下と反比例してクレアチニン、尿素窒素が上昇し、尿毒素が蓄積される。

 健康診断ではクレアチニンで表示されるが、目安として、クレアチニン1㎎/デシリットル以上がCKD、6㎎/デシリットル以上で透析を検討する。腎機能低下による症状が出てくるのは、クレアチニン6㎎/デシリットル以上。

「症状が出た時は命に関わる末期状態。透析直前でも本人はピンピンしていて、むくみが少し出る程度です。それほど腎臓は予備能力が高い。しかしステージが進むにつれて悪化速度が増し、ある時急激に悪くなるところがCKDの怖さです」

 CKDの進行は透析を招くだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率を高める。

■治療

 生活改善や薬物療法を経て、透析治療あるいは腎臓移植になるが、“いきなり透析”のCKD患者も珍しくない。

 透析は血液透析と腹膜透析がある。機械を使って血液を濾過する血液透析に対し、腹膜透析は透析液を出し入れするカテーテルを腹部に埋め込み、腹膜の機能を利用して血液を濾過する。

「腹膜透析の方が残った腎機能を維持するのに良好で、QOL(生活の質)、患者満足度も良い。しかし、普及率が低い。透析治療を受けているのに、腹膜透析の存在を知らない患者さんもいます。透析患者の4割が腹膜透析を知らない、というデータもあります」

 その理由として、十分な情報提供が患者さんに行われていないこと、さらに腹膜透析に熟練した医師や看護師が少ないことが挙げられる。

「さらに、診療報酬との関係などから、患者に腹膜透析の提案をしていない医師が多いことも挙げられます。ある調査では十分な情報提供が行われないために、患者は腹膜透析と双方のメリットを比較しないまま血液透析を受けていると報告されています」

 今回の診療報酬改定で療法選択に関する加算が充実した。医療者側も腹膜透析に関する情報提供を積極的に行うことが予想されている。

「アメリカでは十分情報提供を行うことで、50~80%の患者さんが血液透析ではなく腹膜透析を選ぶという調査結果も出ています。週数回、3~5時間かけて医療機関で受けなければならない血液透析よりも、24時間連続的に自宅でも外出先でも受けられる腹膜透析の方が自由度は高い。今後は病院側も積極的に情報提供を行うべきと考えます」

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