アトピー性皮膚炎が治らない 薬の塗り方に「3つの間違い」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 アトピー性皮膚炎の重症例に対する新薬「デュピルマブ(一般名)」が4月に発売され注目が集まっている。一方で、「何をやっても良くならないと受診する患者さんの中には、薬を正しく塗れていない方がかなりいます」と言うのは、多摩ガーデンクリニック・武藤美香院長(皮膚科・アレルギー専門医)だ。

 アトピー性皮膚炎の治療は、①ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を中心とした薬物療法②保湿・スキンケア③悪化因子の検索と、食事や環境、睡眠や生活習慣を整え、皮膚に刺激を与えない――などが基本だ。

 間違った塗り方でよく見られるのが、まず「使用量が少ない」。 

「ステロイド外用薬や保湿剤の使用量の目安は、成人の人さし指の先から第1関節の長さまで出した量で、成人の手のひらの面積約2倍分に塗れます。目の前で見せると“そんなに?”と驚かれる人も珍しくありません」(武藤院長=以下同)

 次に、「塗る範囲・塗り方の間違い」。

「患部全てに塗る必要がありますが、ごく一部のひどい部分にしか塗っていない。擦り込むように塗るのも駄目。患部に刺激を与え、炎症部位に薬が十分行き渡らない。そっと薬で表面を覆うように塗る」

 そして、「ステロイド外用薬の使用を不適切に勝手にやめてしまう間違い」も。ステロイド外用薬に対する誤った認識や不安感からだ。本来は重症でないアトピー性皮膚炎が、重症化しているケースも少なくない。 

「慢性化していない状態であれば、正しい塗り方を会得すれば、たいていは1週間程度で症状が軽減。作用の弱い薬へと替えられ、最終的には保湿剤中心で対応できる患者さんも多い」

■早期治療で慢性化を防ぐ

 特に乳幼児の湿疹は、アレルギー体質(アトピー性皮膚炎約10倍、食物アレルギー約20倍)のリスクとなるため、早期治療が望ましい。

「年齢を問わず早く皮膚炎を抑えることは重要。間違った治療法を長年続け皮膚炎が慢性化してしまうと、皮膚が硬くなって薬が浸透しにくくなる。弾力性のある健康な皮膚を取り戻すために年単位の治療が必要になるケースもあります」

 6月22~24日に開催された日本アレルギー学会では「重症アトピー性皮膚炎でもデュピルマブ投与開始後2週時点から、かゆみが有意に改善する症例が多い。“かいて症状を悪化させる”という悪循環を断ち切れる。重篤な副作用が少ない」「アトピー性皮膚炎治療薬として7種類の新薬が治験中や承認申請済みで、今後、治療の選択肢が増える見通し」などの報告が寄せられた。

 武藤院長は、自身もアトピー性皮膚炎経験者。中学の時に重症化。医大生の時にコントロールする術を身に付けた。大きかったのは、治療への主体性。知識を身に付け、最適なものを自分で選べるようになった。

「保湿の重要性を痛感しました。高校生までは処方されるがままに尿素系保湿剤を使用していましたが、尿素系保湿剤は皮膚のバリアー機能を壊すと知り、肌のバリアー機能に必須の成分、セラミド入りの医薬部外品保湿剤に替えたのもこの頃。これによって、症状が劇的に改善しました」

 残念なことに、アトピー性皮膚炎に対して尿素系保湿剤をいまだに処方している医師もいる。もし「正しい薬の塗り方」をしているのに、アトピー性皮膚炎に悩み続けているなら、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医や日本アレルギー学会認定アレルギー専門医を一度受診した方がいいかもしれない。

 デュピルマブの製造販売元「サノフィ」の調査によると、重篤な薬剤過敏症の報告は治験403例ではゼロ、市販直後1カ月間の推定約400例では1例。その1例もアドレナリンの使用なく回復している。

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