がん“ステージ3”が“ステージ4”より不安が強い3つの理由

ノーベル賞を受賞した本庶佑さん
ノーベル賞を受賞した本庶佑さん(C)共同通信社

 オプジーボがあれば、進行がんでも安心……。京都大・本庶佑特別教授のノーベル賞受賞後、こんな声をよく聞いた。

 オプジーボは免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる新しいがん治療薬の一つ。手術、放射線、抗がん剤という従来の3大がん治療に続く、第4のがん治療とも呼ばれる。がん細胞を攻撃する免疫細胞にブレーキをかけるタンパク質「PD-1」の働きを阻害し、免疫細胞の攻撃力を高めてがん細胞を排除する。

 オプジーボ以外にも、現在、免疫チェックポイント阻害剤は5種類が認可されている。適用にはステージや治療ラインなどいくつかの条件をクリアしなければならないが、治療の選択肢が限られていた進行がんの患者にとっては、免疫チェックポイント阻害剤の存在が大きな希望になることは間違いないだろう。

 しかしそれゆえに、ステージ4とステージ3で、患者の不安に差が出てきているようだ。

 製薬会社「アストラゼネカ」が、国内死亡率上位3つのがん(肺がん、胃がん、大腸がん)のいずれかの診断を過去5年以内に受けた患者計517人に、がんの不安に対するインターネット調査を行った。それによると、ステージ3の患者の方が、ステージ4よりも不安が強かった。

 監修を行った京都府立医科大学呼吸器内科学・高山浩一教授が言う。

「推論だが、ひとつは治療内容がある。薬物療法になるステージ4は大きく分けて、従来の抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の3つの薬を使う。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤は、従来の抗がん剤より副作用が軽く、治療がしやすい」

■医者のスタンスの違いでも差が

 ところがステージ3では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が適用されない場合がほとんどで、一般的に従来の抗がん剤と放射線治療。抗がん剤は副作用が強く、放射線は、たとえば肺がんでは肺だけでなく食道にもダメージを与え、痛みが出てきて食べ物や水分がのみ込みづらくなる。つまり、治療全体の副作用が強い。

「医者のスタンスの違いも考えられる。ステージ4は根治できないが、できる限り今の生活を維持できるように考え、医者が手加減しながら治療を行う。しかしステージ3は、数は少ないものの根治の可能性もある。少々副作用が出ても〝患者さん頑張りましょう〟となりがち。治療の毒性が強い上に、医者が手を緩めない。患者さんにはとてもつらい治療時期になり、大きなストレスになるのではないか」(高山教授)

 さらにステージ4は、従来の抗がん剤が効かなければ免疫チェックポイント阻害剤……というように、治療戦略が立てられる。しかしステージ3は、抗がん剤+放射線の初回治療が終わると、無治療で経過観察になる。これでは不安が大きくなるだろう。

 昨年、ステージ3の肺がん(非小細胞肺がん)にも適用とされる日本初の免疫チェックポイント阻害剤が登場。今後は、ステージ3の患者の不安の状況も変わっていくことが期待される。

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