発達障害とゲーム依存

スマホを取りあげるのは逆効果 話し合いが子供への対処法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 いまゲーム依存の患者に最も好まれているゲームのひとつが、パソコンやスマホでプレーできる「荒野行動」。日本の小説「バトル・ロワイアル」から発想されたとされる中国産のゲームで、100人程度のプレーヤーが無人島に降り立ち、落ちている武器を拾って、最後のひとりになるまで殺し合うという内容だ。

「こういったゲームを夜中にプレーしながら『殺せー!』などと叫んだりすると、近所にも迷惑になってしまいますし、なにより中高生がゲーム依存のために学校に行かなくなることの弊害は大きい。久里浜医療センターのネット依存外来には、日本全国から親に連れられてゲーム依存の子供が訪れています」

 こう説明するのは、同センター院長の樋口進医師。2011年に日本で初めてネット依存外来を開設した同センターは、日本におけるゲーム依存治療の草分け的存在である。

 ゲーム依存と合併することの多い発達障害には現在、ストラテラ、コンサータ、インチュニブという薬のいずれかが主に処方されるが、ゲーム依存自体に効く薬はない。治療はカウンセリングやデイケアへの参加を通して、患者自身がゲーム依存から抜け出さなければならないという「気付き」を促すことが中心となる。

「久里浜医療センターでは年に1回、夏には文部科学省の委託事業で、国立青少年教育振興機構と協力して、ゲーム依存治療のための8泊9日のキャンプも行っています。スマホの持参は禁止し、ネットなしでも生きていける自分を実感してもらうことで、キャンプ後にゲームのアカウントを消す参加者も多いです。夏休みの後半に実施するので、中高生の参加者には、2学期から学校に復学する重要なきっかけとなっています」

 現在、久里浜医療センターのネット依存外来では、2カ月ごとに次の2カ月分の予約を受け付けているが、すぐに枠がいっぱいになってしまうという。ゲーム依存の治療に取り組める医療機関は、全国的には非常に不足している。子供がゲーム依存になってしまったときに、家庭でもできる対策はあるだろうか?

「スマホを取りあげたり、インターネット環境を切断するのは逆効果。まずはよく話し合って、スマホの時間を制限したり、家族全員がスマホを使わない時間を設けることが大事です。時には、あえて子供にどんなゲームをやっているか聞いてみるのも、対話のきっかけをつくる手段としては有効です」

 特に発達障害の子供は衝動性のコントロールが難しいため、親に注意されると逆上したりすることがあり、対応が難しい。児童精神科への相談なども視野に入れながら、ゲームとのほどよい付き合い方について、家族間での共通認識を模索する必要があるだろう。

(フリージャーナリスト・里中高志)

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