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リハビリ支援ロボット 視覚と音で歩行状態をリアルに確認

原島宏明科長
原島宏明科長(C)日刊ゲンダイ

 病院のリハビリテーション機器のロボット化が進んでいる。南東北グループ「総合東京病院」(東京都中野区)では、2017年4月の回復期リハビリテーション病棟(192床)のオープンに合わせてリハビリ支援ロボットの導入を始めた。

 同院のリハビリテーション科では急性期から回復期、在宅後は通所、外来、訪問と一貫したリハビリが受けられ、理学療法士や作業療法士など250人のスタッフが在籍する。

 現在、6種類のリハビリ支援ロボットが稼働しており、これだけ多くの種類のロボットを活用している施設は全国でも珍しい。導入を決めた理由を同科の原島宏明科長(理学療法士=顔写真)はこう言う。

「最も期待したのは、リハビリ支援ロボットの“歩行サポート力”です。脳卒中などの発症直後の患者さんは、2~3人のスタッフが介助して病室からリハビリ室に移動するだけでも大変でした。それがロボットを使えばベッドサイドに立たせてくれて、歩行もサポートしてくれます。また、リハビリの日々の成果が数値で示され記録できるので、患者さんの励みにもなり、効果的なリハビリが提供できます」

 各ロボットの具体的な機能はこうだ。歩行器の形をした「免荷式リフトPOPO」は、患者の腰に巻いたベルトを引き上げてくれて、体重を軽くした状態で歩行をサポートしてくれる。

「Honda歩行アシスト」は、腰に巻いた機器本体から伸びたアームを太ももに装着。歩くときの股関節の動きをモーターで補助する。「CoCoroe足首アシスト」も同様な仕組みで、足首の動かし方をアシストする。「バイオニックレッグ」は太ももから、すねにかけて装着する。膝の動かし方の再学習をサポートするロボットで、片麻痺の重い患者でも立って歩く訓練ができるという。

 リハビリ室に設置されている「ニュー・ウェイト」は、体全体を吊るして体重を軽くした状態で、床がベルトコンベヤー式に動くトレッドミルで歩行訓練をする。体重を135キロまで免荷できる。

 そして、最も緻密な歩行訓練ができる最新機種が、トヨタ自動車と藤田医科大学が共同開発した「TOYOTAウェルウォーク」だ。体を吊るしてトレッドミルで訓練する部分は「ニュー・ウェイト」と同じだが、患者が立つ正面には大型モニターが設置されており、リハビリ時には麻痺している片足に足型ロボットを装着して実施する。

「モニターには、全身、足元、横の姿勢など3画面が映し出せます。そして、足を出す位置が表示され、足の運びの荷重のかけ方が良いか、悪いかなどが音声で判定されます。視覚と音で患者さんの歩行状態をリアルタイムで確認でき、さらに客観的な定量データが記録できるのです」

■16人のロボット専門チームが技術指導

 これらのリハビリ支援ロボット導入による入院日数や症状の改善率などの効果は、患者一人一人の状態が違うので比較できないが、リハビリの効率の上昇と、スタッフの体力的負担が減ったことは明らかという。

 ロボットを組み合わせたリハビリは、機器の性能が向上すれば操作の仕方も高度になる。そのため同科では、専門スタッフ(16人)として“ロボットチーム”を構成し、順次スタッフの技術習得ができるような体制をとっている。

 今春には同グループの医療・介護・福祉の複合施設「東京リハビリテーションセンター世田谷」が新たにオープンする。そちらにもロボットチームから何人かを派遣する予定という。

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