病気につながる可能性も 「耳掃除」は月1回程度で実は十分

耳掃除は月1回程度で十分
耳掃除は月1回程度で十分

 耳掃除は、ハマってしまう。あまりの気持ちの良さに、頻繁に綿棒を耳に入れて、カサコソカサコソ掃除してしまう人もいるだろう。しかし、耳の専門医は、その習慣に眉をひそめる。

 少し前(2016年)の調査になるが、耳掃除に関する調査結果がある。日用品流通の情報基盤を運営する「プラネット」が行ったもので、どのくらいの頻度で耳掃除をしているかという質問に対し、最も多かったのが「週に1回」の23.1%。続いて、「2~3日に1回」が17.5%、「2~3週に1回」が12.9%。6割以上が週に1回以上耳掃除をしており、それに該当するのは男性で57.1%、女性で67.7%だった。

 何を使って耳掃除をしているか? トップ2は綿棒と耳かきで、どちらも6割を超えた。耳掃除に関するエピソードでは「血が出るまでかいてしまう」「お風呂上がり、毎日綿棒でぐりぐり」「とにかく耳かきが大好き」など。

「耳掃除は月1回くらいやる程度で十分です」

 こう言うのは、日本医科大学耳鼻咽喉科准教授・後藤穣医師だ。

「耳掃除は、耳の穴から鼓膜の手前までの外耳道にたまった耳垢を掃除するもの。耳垢は皮膚の老廃物なので“垢”という認識は正しいですが、一般的には奥の方の耳垢はそのうち自然と手前に移動し、耳の外に出てしまう。耳掃除でかえって耳垢を耳の奥に押し込んでしまい排出しづらくすることも。適度な量の耳垢には、外耳道を保湿する働きがあるので、取り過ぎは禁物です」

 毎日のように耳掃除をしていると、外耳道の耳垢がゼロになる。すると外耳道が乾燥しやすくなる。そこを綿棒や耳かきでこすると、それは乾燥した顔や手の皮膚を垢すりでゴシゴシこするようなもので、荒れて当然だ。顔や手の皮膚の場合は目に見えるので、赤く腫れていれば、さすがに「こするのはやめよう」と思うだろうが外耳道は見えないため、ついやり過ぎてしまう。

「綿棒を“軟らかいもの”と思っているのかもしれません。しかし、結構刺激が強い。耳掃除をし過ぎると外耳道が傷つき、外耳炎を起こします。これらの患者さんは、例外なく、耳垢がゼロです」

■風呂上りの綿棒もNG

 外耳炎の症状は、耳の痛みやかゆみ、耳だれ。耳掃除のやり過ぎが原因で外耳炎を起こし、今度は外耳炎でかゆくてたまらなくなり綿棒や耳かきでかいてしまう。すると、外耳炎が一層悪化する。悪循環だ。

「とにかく触らないで、と患者さんには言いますが、悪循環を断ち切れず、外耳炎をこじらせる人も少なくありません」

 風呂上がりに、水分を取るために綿棒で耳の中をこするのも、外耳炎の原因になる。

 一方で、体質によって耳垢が自然に排出されない人もいる。耳の中にぎっしり詰まっていて、医師が調べても鼓膜が見えないほど。耳掃除のやり過ぎによる外耳炎の患者は、後藤医師が診ている大学病院でも週1~2人は来るので、開業医の先生のところではもっと多いことが予測される。

「突然耳が聞こえなくなったと驚いて外来に来られる人もいます。私の印象では耳垢が湿っている人によくある。飴玉3~4個分くらいの耳垢が取れる人もいます。耳垢が取れにくい体質の人は、3カ月に1回くらいは開業医で耳掃除をしてください」

 耳掃除好きの人は、あの“気持ち良さ”を、ごくたまに楽しもう。

■耳が聞こえなくなったら

 急に耳の聞こえが悪くなったら、様子を見ないで、すぐに近所の耳鼻咽喉科を受診すべきだ。突発性難聴では対応が遅れれば、それだけ聴力を取り戻しにくい。ヘッドホンの繰り返しの利用や大音量で神経が損傷し、音響外傷といって難聴になっている場合もある。いったん聞こえが悪くなると、一生続くケースも少なくない。治療のチャンスを逃してはいけない。

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