致死率25% マダニで感染する「SFTS」 はどう防げばいい?

ペットのマダニ対策が重要
ペットのマダニ対策が重要(提供写真)

 先月、都内在住の50代男性が「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に感染したと東京都が発表。2013年1月に日本で初めて報告されて以降、西日本を中心に猛威を振るっている感染症で、この男性は関東で初の患者。私たちは何を知っておくべきか?

■飼い猫や飼い犬が媒介になることも

 SFTSはマダニを媒介とするウイルス感染症だ。男性は、長崎県を旅行中にマダニに噛まれて感染したとみられている。

 この感染症は、致死率が高い。今年5月29日までに患者数は421例報告されており、死亡例は66例。しかしもっと多いのではないかと専門家は指摘する。国立感染症研究所獣医科学部の前田健部長も、「後の追跡調査でSFTSと判明したものも含めると、低く見積もっても致命率は25%を超えるのではないか」と言う。

 SFTSは、予防のワクチンや薬もなければ、確立された治療法もない。つまり対策の重要なポイントは、感染リスクをいかに下げるか。ひとつは、マダニが多く生息する野山に行く時は、肌の露出を極力少なくする。マダニ用の虫よけ剤を活用する。国立感染症研究所のホームページからパンフレット「マダニ対策、今できること」をダウンロードできるので、参考にするといい。

 そしてもうひとつ重要なのが、「ペットのマダニ対策」だ。ペットから飼い主、獣医師、動物看護師が感染したケースが報告されている。

「人間と同様に、猫や犬もSFTSを発症することが、2017年、世界で初めて日本で確認されたのです。猫の致命率は人間以上で、60%。猫は発症すると動かなくなるほど弱ってしまう。唾液や糞尿など体液にはSFTSのウイルスが多数いるため、飼い主は看病している間に、獣医師や動物看護師は治療中に、感染するリスクがあるのです」(前田部長=以下同)

■感染動物が急激に増加

 猫や犬の感染が判明したのは17年だが、動物の間で急速にSFTS感染が拡大していることは、前田部長らの調査ですでに確認されていた。

「私が西日本のある地域のアライグマを07年から調べたデータがあります。それまではSFTS感染のアライグマはほとんどいませんでしたが、14年には30%が感染、15年以降は50%以上が感染していました」

 現段階では、SFTSの感染は西日本に集中しており、人間のSFTSの感染者が多い地域と、猫や犬の感染が多い地域とはほぼ重なっている。散歩や外に遊びに行ったペットについてマダニが運ばれてくることもあれば、ペットから人間に感染することもある。

「だから猫や犬の飼い主にぜひ行っていただきたいのは、マダニの予防薬をペットに投与すること。獣医師に相談すれば、処方してくれます」

 人間のマダニ予防ワクチンや薬はないが猫や犬にはあるのだ。内服薬、滴下薬などさまざまなタイプがあり、月単位で効果が持続する。100%予防できるわけではないものの、愛するペットの命を守れる可能性が高まり、ひいては、飼い主、獣医師、動物看護師の命を守ることにもつながる。

 なお、現在は西日本中心だが、アライグマの感染拡大スピードの速さを見ると、いつ東日本に脅威がやってきてもおかしくない。

■人間で発症が疑われるのは?

 感染者のほとんどが高齢者。症状は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、下痢、食欲不振などだ。

「SFTSの症状は多くの病気に見られるものですが、スムーズに治療に結びつけるため、これらの症状があり、2週間以内に『マダニに刺された』『弱った動物と接触した』のいずれかに該当するなら、必ず医師に伝えるようにしてください」(前田部長)

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