病み患いのモトを断つ

数値改善でも油断禁物 夏の血圧低下でめまいや脳卒中に

下がらなかった数値が改善して「よし!」
下がらなかった数値が改善して「よし!」/(C)日刊ゲンダイ

 暑い季節は鬱陶しいが、悪いことばかりでもない。4000万人ともいわれる高血圧の人にとって、夏は血圧が下がりやすい時季だ。それで、油断していると、思いもよらぬ不調に襲われることがあるという。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器専門医)に聞いた。

 血圧は、ほかの血液検査の数値と同じように変動する。一日の中では、朝起きてから日中にかけて上昇し、夜間に向けて下がる。そんな血圧の変動が、一年を通してもあるという。

「梅雨から夏になると、気温がグンと上昇し、汗をかくようになります。そうすると、熱を放散するため、血管が拡張。汗とともに塩分も排出されるため、血圧が下がりやすいのです。それまで高めだった人が、収縮期血圧(上)が120(㎜Hg)くらいで安定するなら問題ありません。しかし、110から100を下回るようだと、血圧低下による不調が表れやすくなります。明らかに下がり過ぎです」

 若い人なら、自律神経の働きで血圧が調節されるだろうが、中高年だと、積み重なるストレスや加齢などの影響で調節力が衰え、血圧低下の症状が表れやすいという。

「軽いものなら、めまいや立ちくらみです。それで転倒して、骨折すると厄介だし、最悪の場合、脳の血管が詰まって脳梗塞で救急搬送されることもあります。夏の血圧低下は、決して油断できません」

 薬を飲んでも、期待するほど下がらなかった血圧が下がり、「よかった」と思うのは早計だ。そのまま仕事や外回りに出掛けて、汗をかくと、さらに血圧が下がって、よからぬことが起こり得るという。

「まず、十分な水分を取ること。汗をかいたときは適度な塩分を取るのも大切で、さらにこまめに血圧測定が無難です」

 要は、熱中症対策だ。それが、夏の血圧低下による不調を防ぐ。

 熱中症になると、急激に体内の水分量が減り、血圧が急降下。それが脳梗塞や心筋梗塞を招く。

■利尿剤の併用は要注意

 外回りで汗をかいて、公園の日陰のベンチで一休み。そんなときに急に立ち上がると、夏の血圧低下と起立性低血圧が重なって、ふらっとして転倒したりするそうだ。

「外回りから帰って社内で涼むと、体は気持ちいいでしょう。しかし、外との温度差が5度以上あると、今度は血圧が急上昇します。それはそれで脳卒中のリスクですから、温度差をなるべく小さくすることも大切です」

 生活上の注意点だけでなく、薬のチェックも重要だという。

「冬の薬と同じまま夏を迎えて血圧が下がり過ぎる人は、薬の見直しが重要です。複数の降圧剤を使っている人は容量を少なくする。特に、何かの薬と利尿剤を併用しているケースは、より血圧が下がりやすいので要注意。夏になって、血圧が春ごろの数値より下がってきたら、安心するのではなく、医師に相談して降圧剤の組み合わせを見直してもらうことが大切です。薬は一度決めたら、そのままではありませんから」

 油断禁物だ。

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