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【腰】「腰の痛みナビ体操」が効く3タイプの判定とやり方

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 腰痛を予防するには、とにかく「同じ姿勢で長時間いないこと」が基本になる。腰に負担をかけないためだが、腰のどの部分に無理な力がかかり続けると腰痛の原因になるのか。「お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック」(東京都千代田区)の銅冶英雄院長が言う。

「背骨は椎骨が連なってできています。その椎骨と椎骨の間には、クッションの役割を果たしている『椎間板』という軟骨があります。椎間板の周囲は『線維輪』という線維組織で囲まれて、中心には『髄核』というゼラチン状の物質があります。髄核は腰椎の動きに伴って線維輪の中で移動し、椎間板を変形させておじぎ(前屈)や反らし(後屈)の動きを行っています。悪い姿勢や腰に負担のかかる動作によって椎間板がゆがむと、髄核がずれて線維輪に亀裂が入り、それが腰痛の原因になるのです」

 また、椎間板への栄養は、周囲組織からの組織液の拡散に頼っているため、もともと栄養が届きにくく、一度組織が傷むとなかなか治りにくい。そのため慢性腰痛となって痛みが長引くのだ。

 特に、猫背姿勢のデスクワークや、立ち姿をきれいに見せようとする販売員らの背骨を反らした姿勢は腰に負担がかかりやすい。20~30分に1度くらいは、体を動かして姿勢を変えるようにした方がいいという。

 では、すでに慢性腰痛を抱えている人は、どのようなケアをするといいのか。リハビリテーション専門医でもある銅冶院長は、自ら「腰の痛みナビ体操」という運動療法を開発し、患者の治療にも取り入れている。そのやり方を紹介する。

 まず、どういうタイプの腰痛なのか、3つの腰の動きで自分のタイプを確認することから始める。そのタイプによって体操のやり方が異なる。

①足を肩幅に開いて手を腰に当て、体を後ろに反らして痛みが改善するようなら「後屈改善型」。②足を肩幅に開いて体を前に曲げて改善するようなら「前屈改善型」。

③足を肩幅に開いて手を腰に当て、お尻を左右にずらして改善する方向があれば「側方改善型」だ。

 改善の診断目安は、「痛みの範囲」が小さくなる、「痛みの強さ」が軽くなる、また痛みの範囲や強さに変化がなくても、「動きやすさ」が良くなれば改善と判断する。

 それぞれの動きを10回ぐらいずつ試して、いずれかのタイプに当てはまるようなら体操の効果が期待できる。ただし、次のような腰痛は対象外。体操は行わずに、医療機関を受診した方がいいという。

▽足に力が入らない、動かせない▽尿が出せない▽転んだり、踏み外して腰を痛めた▽腰痛とともに急激に体重が落ちた▽腰の痛みに加えて熱が続いている。

 各タイプ別の体操のやり方はこうだ。

◎後屈改善型の人は「壁ドン反らし体操」

 ①壁に向かって半歩~1歩離れて、両手をついて立つ(両足は腰幅に開く)。②両手を壁につけ両肘と両膝は伸ばしたまま。腰をできるだけ前方に反らせた姿勢で2~3秒保ったあと、腰の姿勢をゆっくり元に戻す。

◎前屈改善型の人は「壁もたれおじぎ体操」

 ①壁に背を向け半歩~1歩離れた位置に立ち、両足を腰幅に開き、両手は腰に当てお尻を壁につける。②お尻を壁から離さないようにしながら上半身を前に倒した(腰を曲げた)姿勢を2~3秒保つ。ゆっくり上半身を起こして腰を元に戻す。

◎側方改善型の人は「お尻ずらし体操」

 お尻を右にずらして改善する場合、①自分の右側に壁がくるように、少し離れて両足を腰幅に開いて立つ。右肘を曲げた状態で壁につける。右肩と肘は水平にして、左手は腰に置く。②左手で腰を押すイメージで、両肩を水平に保ちながらお尻を右側にずらし、2~3秒キープする。お尻をゆっくり元に戻す。※お尻を左にずらして改善する場合は、壁を左側にして同じように行う。

 この3つの体操は、どれも10回を1セットとして、1日2~3時間おきに5~6セット行う。

「自分に合った体操で改善を感じられれば、そのまま継続します。中には続けている途中で痛みが改善しなくなる人もいます。その場合には、再びタイプ診断を行って、体操の方向を変更してみてください」

 銅冶院長が、外来でこの運動療法を処方した患者数は5万人以上。指導通り適切にやれば、改善率は85%以上という。

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