歌って健康になる

歌いながら口腔機能アップ「生活総合機能改善機器」とは

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 1970年代、飲食店を中心に日本に広まったカラ(空っぽ)オケ(オーケストラ)は、今やKARAOKEと国際用語になるほど世界中に普及した。

「カラオケがひとつの新たな音楽文化を築き上げました。その恩返しというのでしょうか、カラオケを活用したさまざまな健康促進のためのプログラムに挑戦しています」

 こう語るのはカラオケ機器の最大手である「第一興商」(本社=東京都品川区)で長年、社長を務め、現在、相談役である林三郎氏である。

 実際、カラオケを認知症患者らの療法に取り入れた病院や老人施設が増えてきた。地方自治体の施設でも高齢化の健康対策として導入している。

 長年、ただ歌うだけだったカラオケだが、最近は医学会でも健康効果を認めている。第一興商は、その延長上に「生活総合機能改善機器」(DKエルダーシステム)を開発、約500種類の多彩なコンテンツを導入している。

「鶴見大学・先制医療研究センター」(神奈川県横浜市)と共同開発した「うたってアンチエイジング!健口クリニック」もそのひとつ。童謡「村の鍛冶屋」「どんぐりころころ」「さくらさくら」などを歌うとき、歌詞を「ぱ、た、か、ら」に置き換えて口腔機能の維持と向上を目指す口腔体操ができるようにしている。具体的には「ぱ」の発音は、唇を強く閉じて開いて出る音。唇を閉じる力を養う。「た」は舌先を上の前歯の裏につけ離すことでできる音。舌の前方への動きを活発化させる。

「健口クリニック」を開発した同大学医療研究センターの「嚥下機能」の測定では、大きな改善(唾液嚥下機能や咬合力などの上昇)がみられた。これは高齢者に多くみられる誤嚥性肺炎の予防策になるという。

「健口クリニック」を内蔵した「DKエルダーシステム機」は、重さが46キロ、高さ115センチ、幅が55.2センチ。ソフトは他に、東北福祉大学(宮城県仙台市)が歌に合わせたストレッチやステップ運動である「みんなの元気塾」、同じく「東京都健康長寿医療センター」が開発した運動プログラムも入っている。

 歌と音楽の力を結集させて、健康を維持しようというカラオケ機器の普及とほぼ同時に「日本音楽健康協会」(東京都品川区)も設立された。前出の林三郎氏はその顧問だ。

「この協会で、『音楽健康指導士』を育成し、老人施設や地方自治体の要請に応じて全国に派遣しております。現在、健康音楽指導士の資格者は2000人を数えるでしょうか。歌や音楽を通して健康を保持し、さらに地域の活性化に結びついたら本望ですね」(林氏)

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