膵がんを知る

膵がん検査「超音波内視鏡」 本当にCTやMRIよりも“優秀”か

(写真はイメージ)
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 膵がんは治すのが難しい病気ですが、早期発見できればそれも可能です。実際、がんの大きさが1センチ以下の膵がんでは5年生存率が80%以上と報告されています。

 では、どうすれば1センチ以下の膵がんを見つけられるのでしょうか?

 前回は膵がん検査には第1段階が血液検査と超音波検査、第2段階は造影CTやMRIといった画像検査、第3段階ががん細胞片を採取する病理検査であることを説明しました。早期発見のカギを握るのは第2段階の画像検査なのですが、最近はこの画像検査に第3段階の病理検査を組み合わせた、新たな検査方法が注目を集めています。

 それが、「超音波内視鏡」(EUS)検査です。内視鏡の先端に超音波診断装置を取り付けたもので、口から挿入して胃、十二指腸、胆管、胆のうなどの消化器官を調べることができます。

 そもそもエコー画像は分解能が高く、1~2ミリの病変発見も可能で、その硬さもカラー表示されわかりやすい。造影剤を使えば血流の評価もできます。

 とくに膵臓は胃の真裏、十二指腸の真横にあるため観察が難しいのですが、EUSなら詳しく調べることができます。胃や十二指腸越しに膵臓を見ながら、内視鏡の先端から針を出して、がん病巣に差し込み組織を採取することも可能です。これを「超音波内視鏡下穿刺吸引法」(EUS―FNA)と言います。

 膵がんの9割は腺がんですが別のタイプもあり、病理診断が重要です。膵がんはそのタイプにより使う抗がん剤などが替わるからです。より良い治療法を選べば生存率が大きく変わってきます。

 肝心の画像診断能力はどうなのでしょうか?

「膵癌診療ガイドライン2019年版」がEUSの優秀さをうたっています。腫瘍性病変の拾い上げ診断の能力を存在診断能と言いますが、同ガイドラインではEUSによる存在診断能は97・7%。CTの87・6%よりも優れているというデータを掲載しています。異常部位についての質的な評価をする能力を質的診断能と言いますが、正誤率はEUSが89・6%に対してCTが85・1%との研究結果を紹介しています。2センチ以下の膵がんの存在診断能はEUSが94・4%でCTが50%、将来的に膵がんになるリスクが高い、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の経過観察についてもCTやMRIよりも優位性があるとしています。最近はガイドラインは作成に携わった委員の先生方が委員会投票をしてその結果を公表していますが、「膵がんが疑われるときにEUSを診断方法として推奨できるか」について、「行うことを推奨する(強い推奨)」が3%、「行うことを提案する(弱い推奨)」97%だったと報告しています。

 しかし、これほどEUSを持ち上げながら最終的なステートメントは「EUSは、他の画像診断と比較すると膵がんをより高感度で検出することができるため、膵がんを疑った場合にEUSを行うことを提案する。しかし、侵襲的検査であるため適応決定は慎重に行う必要がある」として「推奨の強さ:弱い、エビデンスの確実性:C(弱)」としています。なぜなのでしょうか?

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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