病気を近づけない体のメンテナンス

【肛門】500万人以上が悩む…便失禁を防ぐ3つの生活習慣

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 加齢による肛門括約筋の衰えで起こる漏出性便失禁は、排便後にも直腸に残っている粘液としての便が漏れるケースが多い。

 漏れる便は少量なので、対策として尿漏れパッドやナプキンを使っている人が多いという。それでも頻繁に漏れる人は、恥ずかしがらずに受診した方がいい。

 便失禁の治療法には、薬物療法、機器を使った治療、手術などがある。

 肛門の病気といえば、まず「痔」を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、実際には悩んでいる人が多くいながら、あまり語られることがないのが「便失禁」だ。

 疫学調査では、有症率に男女差はなく、20~65歳の4%、65歳以上では7・5%の割合で起きていて、国内の推定患者は500万人以上とされる。しかし、恥ずかしさやどこを受診していいか分からないために、4人に3人は誰にも相談できずに悩んでいる。

 便失禁には、自分でも気づかないうちに漏れてしまう「漏出性便失禁」(全体の49%)と、我慢できずにトイレに着く前に漏れてしまう「切迫性便失禁」(同16%)、その両方を併せ持つ便失禁(同35%)がある。何が原因で、どんな人に起こりやすいのか。自治医科大学付属病院・消化器外科(排便機能外来)の味村俊樹教授が言う。

「最も多いのは、肛門を締める筋肉(内肛門括約筋)が加齢によって弱くなって起こる漏出性便失禁。自然分娩で出産した女性も肛門括約筋や神経がダメージを受けると起こりやすく、初産では約10%の人に便失禁が起こるようです。複雑な痔ろうや直腸がんの手術で、肛門括約筋を切るようなケースでも便失禁のリスクが高くなります」

 肛門括約筋や神経に問題がなくても、過敏性腸症候群で直腸の知覚過敏があると切迫性便失禁を起こしやすくなる。

 また、脳梗塞や糖尿病の発症による神経障害が影響して便失禁を起こす場合もあるという。

 では、便失禁を防ぐには、生活でどんなことに注意すればいいのか。便失禁の治療で指導している生活習慣の改善は、主に「排便」「運動」「食生活」の3つ。これらは痔の予防にも共通することが多い。

 排便で最も大切なことは、便意を感じたら我慢せずにトイレに行き、排便する習慣をつけること。長い時間便座に腰かけていきむのは良くない。運動習慣は腸の動きを良くして排便リズムを整えてくれる。ウオーキングなど無理なく継続できる運動を習慣にしよう。

「便がゆるいと、それだけ便漏れの頻度が増えてしまいます。食生活は、便のボリュームを増やして、硬さを調節してくれる食物繊維を多く含んだ食品を取ることを心がける。日本人の成人1日当たりの食物繊維の摂取量は平均14グラムくらいですが、1日25グラムくらいを目標に取ってください」

 積極的に取りたい食物繊維は、便を固形化して硬さを保つ「不溶性食物繊維」。繊維が溶けずに残る食品で、大麦や玄米といった穀類、れんこん、ごぼう、にんじん、大豆などだ。取り過ぎに注意するのは、コーヒーや紅茶などに含まれるカフェイン、アルコール、香辛料の多い食品。これらは便を肛門へ移動させる腸管の蠕動運動を活発にさせ、下痢を起こしやすくさせるからだ。

 もう一つ便失禁の治療で用いられている運動は、骨盤の底にあり排尿、排便をコントロールする役割を担っている骨盤底筋を鍛える「骨盤底筋収縮訓練」。やり方はこうだ。

(1)尿道・肛門・膣(骨盤底筋)を5秒間ギュッと締めた後に、10秒間休む

(2)骨盤底筋を①よりも弱い力で10秒間締めた後に、20秒間休む

(3)骨盤底筋をギュッと締めて、すぐに緩める

 (1)、(2)、(3)をおのおの10回で合計30回を1セットとし、毎日3~5セット行う。通勤途中、仕事中、入浴中と、慣れればいろいろな姿勢でできるので習慣にするといい。

「間違いやすいのは、骨盤底筋に力を入れるときに腹筋にも力を入れてしまうことです。最初のうちはお腹に手を当てて、腹筋に力が入っていないことを確認しながらやるといいです。骨盤底筋収縮訓練が便失禁の予防になるという明確なデータはありませんが、治療法としては有効なので、予防にもなると思います。尿失禁の予防になることは分かっているので、普段から習慣にしておけば一石二鳥です」

■病院では薬物療法や手術がある

 加齢による肛門括約筋の衰えで起こる漏出性便失禁は、排便後にも直腸に残っている粘液としての便が漏れるケースが多い。

 漏れる便は少量なので、対策として尿漏れパッドやナプキンを使っている人が多いという。それでも頻繁に漏れる人は、恥ずかしがらずに受診した方がいい。

 便失禁の治療法には、薬物療法、機器を使った治療、手術などがある。

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