病気を近づけない体のメンテナンス

のど<上>加齢とともに衰える…「のどトレ」の正しいやり方

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 体の老化を表す「血管年齢」や「皮膚年齢」「脳年齢」という言葉はよく聞くが、のどや肺も加齢とともに衰えるという認識を持っている人は少ないのではないか。

 声を出すときに使う筋肉は、のみ込む(嚥下)ときに使うのどの筋肉と同じ。さらに声は肺を動かす筋肉とも深く関係している。つまり、声、のど、肺の老化はリンクしていて、どれかひとつが老化していたら、他の機能も老化していると思った方がいい。「池袋大谷クリニック」(東京都豊島区)の大谷義夫院長が言う。

「食事をしていてむせる、食べ物がのみ込みにくくなった、せき払いが増えた、声がかすれてきた、などの症状があれば、のどの老化が始まっている可能性が高いです。のどが衰えていると、インフルエンザや肺炎のリスクが高まり、最終的には生命維持に不可欠な呼吸機能の低下につながります。脳トレや筋トレと同じように、『のどトレ』をすることで機能低下を遅らせることが可能です」

 まず、自分の声、のど、肺の若さはどの程度なのか。次のテストをすることで分かるという。

■発声能力テスト

 息を目いっぱい吸い込んで、普段話す声と同じくらいの大きさで「あー」と、できるだけ長く声を出し、その時間を計る。《判定》男性15秒以上、女性10秒以上続けられれば、発声能力に問題なし。

■のど年齢テスト

 口に水を含み湿らせたら飲み込み、人さし指をのど仏に当てる。30秒間に何回唾液の飲み込み動作(空嚥下)できるか数える。
《判定》8回(40代)、7回(50代)、6回(60代)、5回(70代)、4回以下(80代以上)。カッコ内は相応するのど年齢。

■肺年齢テスト

 ティッシュペーパーをテーブルの上に1枚置き、息を吐いて吹き飛ばせる距離を測る。
《判定》160センチ(男性40代/女性30代後半)、150センチ(男性50代/女性40代)、140センチ(男性60代/女性50代)、130センチ(男性70代/女性60代)、120センチ(男性80代前半/女性70代前半)。カッコ内は相応する肺年齢。

「発声能力テストの平均値は、男性は約30秒、女性は約20秒です。のみ込む力が弱くなると、発声時間も短くなります。のど年齢テストは、5回以下では誤嚥性肺炎のリスクが高くなるので要注意です。高齢になるほど空嚥下しにくくなるのは、のどの老化とともに唾液の分泌量が減るからです。肺年齢テストは呼吸筋のトレーニングにもなるので、週に2~3回行えば肺機能がだんだんアップしていきます」

 3つのテストで自分ののどと肺の能力の程度が分かったら、次は具体的な「のどトレ」のやり方だ。大谷院長はこれまで、のどや肺の機能の老化を防ぐ効果的な方法を考えてきた。それで結論に至ったのが、声を出すことで関連する筋肉を総合的に鍛えることが、最も簡単で効果的なのどや肺のトレーニングになるということ。来院する患者たちにも勧めているのは「音読」だ。

 音読のテキストとして用いるのは、大きな声で気持ちよく発声できれば何でもいい。名作、古典、お経など、お気に入りの本1冊を毎日少しずつ音読するのでもいい。

「音読トレーニングの目安とする時間は、1回1分、朝昼晩の1日3回(1日3分)です。もっと長く音読しても構いません。無理なく続けられるためにハードルを低く設定しています。重要なのは毎日、短時間でもコツコツと継続することです」

 ひとつだけ心掛けることがある。「腹式呼吸で、ゆっくりと大きな声で読む」ことだ。腹式呼吸は、息を吸い込んだときにお腹が膨らむ呼吸法。やり方が分からない人は、あおむけに寝ると自然に腹式呼吸になるので、まずはあおむけに寝て呼吸の仕方のコツを掴むといい。やり方はこうだ。

①あおむけに寝て軽く膝を立て、片方の手をお腹に、もう片方の手を胸に置く。②お腹が膨らむのを確認しながら、鼻から息を吸い込む。胸はあまり動かないことを確認。③吸った時間の2倍をかけて、すぼめた口から息を吐き、お腹が元に戻るのを確認する。

 あおむけに寝た姿勢で腹式呼吸に慣れたら椅子に座ってやってみよう。

「音読トレーニングを習慣にすると、声を出すことはとても楽しいですし、体が若返ってくるのが実感できると思います。毎日続けていれば、健康に大きな差がつくことは間違いありません」

関連記事