はとバス事故で死亡者…インフル「仕事休め」の重大サイン

停車中のハイヤーに追突、街路灯に衝突して止まった
停車中のハイヤーに追突、街路灯に衝突して止まった(C)共同通信社

 先週4日に東京・新宿区で起きた「はとバス」の事故にドキッとした人もいるだろう。逮捕された運転手(37)は当日午前7時ごろの点呼で体調不良を申告せず、担当者による対面確認でも異常は見られなかったという。ところが約12時間後の午後6時半にハイヤーに追突し、ハイヤーの運転手が死亡した。はとバスの運転手は38度超の高熱でインフルエンザと診断された。

 インフルが急速に拡大している。厚労省が6日に発表した報告によると、11月25日~12月1日の全国の患者報告数は2万7393人。昨年同期(4599人)の約6倍に上る。

 はとバスの運転手は「風邪をひいて、意識が飛んだ」と説明したが、実はインフルだった。医学博士の米山公啓氏によると、バスの運転手のようにインフルにかかりながら風邪をひいたと勘違いする人は少なくない。放置しているとあっという間に高熱が出るのがインフルの怖いところだ。米山氏が言う。

「インフルの前兆として悪寒が走る、手足に筋肉痛が起きる、体がだるいといった症状があります。中でも悪寒はかなり初期の症状だから、この段階で医師の診察を受け、進行を食い止めなければなりません。熱が出て頭がボーッとする意識混濁は特に要注意。すぐに意識消失に陥ります。大人が38度の熱に達したら、死にそうな状態と考えてください。一般のサラリーマンも歩行中に路上で倒れたり、他人とぶつかってケガをさせる危険があります」

 米山氏によると、事故を起こしたバス運転手は約12時間のうちにインフルのウイルスが増殖したと考えられるそうだ。

「初期症状を感じたら医師の診察を受け、ゾフルーザやイナビルなどの薬を飲むべきです。どちらも1回飲めば4、5時間で熱が下がります。日本人は体調が悪くても仕事をしますが、欧米人はインフルになったらすぐに休み、結果的に早く回復する。悪寒などの前兆は体が『仕事を休んで安静にしろ』と命じる重大なサイン。見落としてはなりません」(米山公啓氏)

 気になるのは事故を起こしたバス運転手の刑罰だ。

「刑事裁判では過失運転致死傷罪に問われると思われます。体調が悪いと分かりながらバスを運転したとすれば通常の事故より責任が重くなるはずです。これは一般サラリーマンも同じなので気をつけてください」(弁護士の篠原一廣氏)

 病んだら乗るな、である。

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