病み患いのモトを断つ

糖尿病女性は42%も発症抑制 低用量アスピリンの認知症予防効果は本物か

市販薬のバファリンを服用してはいけない
市販薬のバファリンを服用してはいけない(C)日刊ゲンダイ

 年を取ると、多かれ少なかれ認知症が気になるだろう。2025年には、65歳以上の5人に1人がそうなると見込まれている。中でも糖尿病は認知症のリスク因子のひとつだが、その糖尿病と認知症との関係で注目の研究結果が発表された。

 兵庫医大と国立循環器病研究センターなどのグループは、血液サラサラ効果で知られる低用量アスピリンに着目。その認知症予防効果を検証すべく、臨床試験に参加。研究に同意した2型糖尿病患者2536人を、低用量アスピリンを服用する1259人と、服用しない1277人にランダムに分けて、2002年から17年の約15年にわたって追跡した。

 その結果、128人が認知症を発症。男女別に低用量アスピリンの有無で分析したところ、低用量アスピリンを服用した女性は、服用していない女性に比べ、認知症発症率が有意に42%も低かったのだ。男性については差がなかったという。

 聖路加国際病院名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏は、「あくまでも私見」と断った上でこう言う。

「なぜ低用量アスピリンの効果に男女差があるのか分かりませんが、認知症の薬を服用した男女を見ていると、女性の方が比較的進行が遅くなるケースが多いように思われます。ひょっとすると、女性ならではの事情が影響しているのかもしれません」

 グループは「今後、研究を進めていくことで、低用量アスピリンが認知症予防薬として活用されることが期待される」としている。

■“もろ刃のの剣”で市販薬の内服は危険

 認知症のひとつアルツハイマー病とアスピリンを巡っては、米ラッシュ医大の研究も興味深い。アルツハイマーは、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積することが発症の一因とされるが、ラッシュ医大のチームは昨年、アミロイドβを除去する機序を解明。アルツハイマー病のモデルマウスに低用量アスピリンを1カ月経口投与したところ、それが除去されていたという。

 国内の糖尿病患者は、予備群を含めて2000万人(「国民健康・栄養調査」2016年)。国民病ともいうべき糖尿病があると、アルツハイマー病は1・5倍、別の認知症のタイプである脳血管性は2・5倍も発症しやすい。認知症予防でも糖尿病対策が重要だけに相次ぐ低用量アスピリンの効果は見逃せない。

 低用量アスピリンのパワーの源が、米ラッシュ医大が見いだしたメカニズムそのものなら、認知症対策で希望が持てるが、一筋縄ではいきそうもないという。

「一般に低用量アスピリンは、狭心症や脳梗塞の前兆(TIA)などがある人が、心筋梗塞や脳梗塞を予防するために処方します。その効果は古くから認められ、昨年は、糖尿病の人での研究結果が『ニューイングランドジャーナルオブメディシン(NEJM)』に掲載されました。改めて糖尿病での予防効果が示されましたが、出血しやすさも改めて浮き彫りになっているのです」(西崎氏)

 そのNEJMに掲載された報告では、頭蓋内出血や眼底出血など重篤な出血は、低用量アスピリン服用群が4・1%で、服用しない群が3・2%だった。“もろ刃の剣”なのだ。

 鎮痛薬としての市販薬のアスピリンは低用量アスピリンとは異なる。くれぐれも自分勝手に市販のアスピリンを服用しないように。危険だ。

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