【Q】糖尿病で通院中です。医師から歯科医院での口腔内ケアを強く勧められました。口腔内の環境が良くなれば血糖値は下がるのでしょうか?
【A】糖尿病に歯周病が関連していることは明らかで、口腔内環境を整えることで血糖値も下がるといわれています。
2016年、厚労省の「国民健康・栄養調査」で、「糖尿病が強く疑われる」成人の患者数が初めて推計1000万人を突破しました。糖尿病はすい臓から分泌されるホルモン「インスリン」の働きが低下する病気で、肥満者の内臓脂肪には腫瘍壊死(えし)因子(TNF-α)と呼ばれるサイトカイン(生理活性タンパク質)が多く表れ、TNF-αはインスリンの作用を阻害することがわかっています。そして、重度の歯周病の患者さんの口腔内から検出されるグラム陰性菌がつくる内毒素も、TNF-αの生成を促進することがわかっています。つまり、歯周病患者は糖尿病になりやすい、ということです。心当たりがある方も多いのではないでしょうか?
裏を返せば、歯周病治療をすることでTNF-αがつくられにくくなり、結果的に血糖コントロールが好転する可能性が高くなるわけです。
印象的な30代の男性患者さんがいらっしゃいます。明らかに太っていて、「歯ブラシを持ってないのではないか」と毎回疑うくらい、いつもプラーク(細菌の塊)まみれでした。
しかし、久しぶりに来院されたとき、激やせしていて本人と気づきませんでした。
話を聞くと、「糖尿病と診断されて食事制限と運動で30キロやせた」とのこと。口腔内を見てみると、あんなにプラークまみれだったのがウソのようにきれいに管理されていました。ご本人は「特に口腔内ケアには努力していない」とおっしゃるので笑ってしまいましたが、彼を見て、糖尿病は歯周病に関与していることが実によくわかりました。
1998年に九州大学が肥満と歯周病の関連について初めて報告しましたが、現在では今回お話ししたようにさまざまな事実がわかってきています。歯周病患者は糖尿病になりやすく、糖尿病患者は歯周病になりやすい、ということです。
(構成=小澤美佳)
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