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東京は2週間早く飛散 花粉症に勝つ治療の3段構えと生活工夫

今のうちに対策
今のうちに対策

 厄介なシーズンの到来だ。暖冬の影響か、東京の八王子や青梅などでは過去10年の平均より2週間も早くスギ花粉が観測された。今月下旬には、スギ花粉の飛散エリアは東北南部まで拡大する。耳鼻科などで処方される薬が治療の基本だが、薬を飲んでも鼻がムズムズしたりする人は珍しくない。悪化を防ぐ工夫や奥の手は、知っておいた方がいいだろう。

■内科や整形外科で薬を処方される人は要注意

 本格的な花粉症シーズンがスタートする前の今こそ、やっておきたいことがある。医薬情報研究所エス・アイ・シーの医薬情報部門責任者で薬剤師の堀美智子氏が言う。

「くしゃみ、鼻水、鼻づまりを抑えるのは、鼻に直接噴霧するステロイド点鼻薬です。花粉が本格的に飛散する前、あるいは症状が軽いうちからシーズン終了まで毎日使うのが重要。ステロイドというと副作用を気にする人がいますが、現在使われている点鼻薬は、局所のみに作用し、全身への影響はほとんどなく、子供にも安心して長期間使用できるのです」

 花粉症の薬は、必ずしも耳鼻科で処方されるとは限らない。高血圧や糖尿病などの人は内科で処方されたり、膝や腰の痛みなどがあると、整形外科で薬をもらうケースもある。医師の中にもステロイド不信が強い人がいて、そうすると、ステロイド点鼻薬がスルーされ、処方されないことがあるという。

「今の花粉症治療は、ステロイド点鼻薬がベースです。それで鼻の症状が抑えられなければ抗ヒスタミン薬を内服し、それでもつらければ、漢方の小青竜湯を加えます。3段構えが基本です」(堀氏)

 ステロイド点鼻薬でよく処方されるのは、「アラミスト(一般名フルチカゾン)」「ナゾネックス(同モメタゾン)」「エリザス(同デキサメタゾン)」などで、鼻に1日1回噴霧する。ベースの“武器”がない人は、耳鼻科で処方してもらうといいだろう。

 市販の点鼻薬にも、ステロイドを含むものがある。使い過ぎると、かえって鼻づまりを悪化させる。噴霧は1日1回と3段構えを肝に銘じよう。

■視力が悪くなくてもダテメガネ

 花粉症で苦しむ人は、マスクが欠かせない。それでガードできるのは、口と鼻だ。赤坂山王クリニック院長の梅田悦生氏は、花粉症の耳鼻科医。自らの経験から患者に勧めることがある。

「メガネです。花粉症用のゴーグルがベストですが、見た目がよくなく、仕事では使いにくい。それで患者さんには、メガネをお勧めします。視力のいい方やコンタクト派の方も、ダテメガネで花粉の侵入を防ぐことは大切。目に入った花粉は、涙と一緒に鼻涙管を通って鼻に流れます。目の症状がつらくなくても、鼻症状の緩和でメガネをかけるのは意味があるのです」

 花粉は、上から降ってくる。外出時はメガネに加えて、ハットのような帽子をかぶると、花粉よけに効果的。

「自宅や会社に戻ったら、手洗いのときに顔も洗うのがお勧めです」(梅田氏)という。

 花粉症で目がかゆいと、目薬をさす。コンタクトユーザーは、目薬選びが重要だという。

「目薬によっては、防腐剤が含まれています。それがコンタクトレンズに吸着すると、角膜に炎症ができる恐れがあるのです。コンタクトを着けているときに点眼するなら、必ず薬剤師に確認して防腐剤フリーの商品を選ぶこと。防腐剤を含む目薬で炎症を悪化させている人が少なくありません」(堀氏)

メガネでガード、コンタクト派は防腐剤なしの目薬を
メガネでガード、コンタクト派は防腐剤なしの目薬を(C)日刊ゲンダイ
目と鼻がスッキリする3つのツボ

 耳鼻科医の梅田氏は、帰宅すると、鼻うがいするのが日課。西洋医学を極めた人が頼るのが、東洋医学的な手法というのは意外だろう。そんな東洋医学の施術を行う鍼灸院には、花粉症をはじめとするアレルギーの人も通ってくる。東京・大久保にある南石鍼灸治療院の朴宰弘院長の元にも、アレルギー患者が訪れる。その朴院長も勧める鼻うがいに加えて、3つのツボを押すと、花粉症の症状が和らぐという。どこを押せばいいのか。朴院長に聞いた。

「蒸しタオルなどで顔を温めたら、鼻の穴の外側の付け根にある『迎香』を押します。人さし指と親指で鼻をつまむようにゆっくりと。時々強めにギュッと押します。瞳の真下で頬骨の上にある『四白』、両眉の間にある『印堂』も、それぞれ人さし指の腹で“のの字”を書くようにぐりぐりと押しましょう。3つとも、20~30回ほどしっかり押すと、目と鼻がスッキリします」

 東洋医学で花粉症は、水分の偏在と考える。これらのツボは、いずれも血流を良くして、水分のバランスを整える働きがあるという。

「『迎香』と『印堂』は鼻水や鼻づまり、くしゃみ対策に、『四白』は目のかゆみ対策になります。蒸しタオルで温めるのは、血流アップを促すためです。入浴中にこれらのツボを押すのもお勧めですよ」(朴氏)

 つらいときには、仕事の合間に押すといいという。

マヨネーズは控えめに
マヨネーズは控えめに(C)日刊ゲンダイ
トランス脂肪酸もリスク要因

 マーガリンやショートニング、マヨネーズなどに含まれるトランス脂肪酸は、肥満や心臓病との関連性が分かり、米国ではその一部を食品に添加することが禁止だ。

 実はこれ、欧米の報告で、花粉症を含むアレルギー性鼻炎のリスク因子であることも分かっている。

 日本人の摂取量は欧米より少なく、WHOの勧告基準を下回っているが、ファストフードやスーパー、コンビニの総菜、スナック、ビスケットなどに多く含まれるため、日頃からこれらをよく食べる人は要注意。花粉症がつらければ、これらを避け、和食にすべきだろう。

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