misonoも闘病中メニエール病 根本治療ない中どう付き合う

症状が治まっても再発を繰り返すケースも
症状が治まっても再発を繰り返すケースも(C)日刊ゲンダイ

 昨年10月初め、歌手のmisono(35)が「メニエール病」を患っていることを情報番組で報告した。自身のブログには、「原因不明の体調不良がしばらく続き、いつから罹患したか分からない」とつづっている。活動を一部制限しながら仕事を継続しているが、2月中旬のブログでは「良くなるどころか、悪化していってるので……あんなにも大きなステージとスピーカーだったのに、ほとんど音が聞こえてなくて……」と語っている。メニエール病は原因不明といわれ、症状が治まっても再発を繰り返すケースもあり、完治したかどうかの判断が難しい。どう付き合っていけばいいのか。東京医科歯科大学耳鼻咽喉科学講座教授の堤剛氏に詳しく聞いた。

 メニエール病は、主に突然の回転性のめまい、耳鳴り、難聴の3つの症状を繰り返し、吐き気や嘔吐を伴う場合もある。

「回転性めまい発作の持続時間は10分から半日くらいです。同時に、初期は低音域の聞こえにくさや耳が詰まったような耳閉感があり、それらが反復して次第に難聴になっていく病気です」

 原因は内リンパ水腫(内耳の水膨れ)といわれるが、はっきりしたことは分かっていない。症状が教科書的にピタッと当てはまって病気が始まるものでもなく、個人差も大きいという。

「大きな発作ならば本人も自覚をしやすいのですが、慢性的なふらつきだと病院を受診するきっかけにならず、次第にQOL(生活の質)が低下していく場合もあります」

 主な治療法は安静と薬物療法だ。

「まずは、駅まで歩く、軽いジョギングをするなど、有酸素運動を取り入れた生活習慣を目指します。ストレスも関与するといわれるので、ストレスを避ける生活が望ましいです。しかし仕事などをしていれば、誰にだって多少はストレスがあるものです。完全に排除する方が難しい」

 発散を上手にできればいいが、発散できないことをストレスに感じるくらいならば、ある程度は人生の付きものとして楽観的に受け止めるのが得策のようだ。

「薬物療法は、体内の余分な水分を排出するための利尿剤が用いられることが多いです。これで約7割の方が症状をコントロールできるようになります」

 他には内耳の機能を落とす抗生剤を用いたり、手術適応になるケースもある。

■ストレスを避けて「安静」を心がける

 では、発作時はどうしたらいいのか。

「発作中は病院に来ることも困難だと思います。発作が起きたら閉眼して、外的刺激を避け、楽な姿勢で安静にしていることです。また、発作中の症状を観察しておくことも大切です。メニエール病は、専門家であれば症状だけでおおよそ診断がつきます。『発作のきっかけ』『1回当たりの持続時間』『回数』『難聴、嘔気や嘔吐などそのほかの随伴症状』といった点を細かく記録しておくと診断に役立てることができます」

 専門は耳鼻科だ。

「患者さんの中には、めまいやふらつきがあるため脳卒中を疑って脳外科を受診し、頭部の検査をしたら問題がなかったとして診断が遅れるケースがあります。専門は耳鼻科であることを知っておくことや、耳鼻科にかかわらずかかりつけ医を持っておくことが大切です。診断がつかないと、次第に難聴が悪化するケースや、本人の不安が増強される場合があるのです」

 メニエール病は再発を繰り返すケースがあるので、罹患すると就労が困難になる職業もある。

「高所での作業など発作時に身を守ることが難しい場合、命の危険があるので就労が難しい。そのため、中には事務職などに転職する人もいます。十分に聞こえず、音程を取ることもできなくて音楽活動を休止する人や、現役を引退するプロスポーツ選手もいます」

 他人には見えにくい病気だからこそ、周りの理解も必要になる。活動を温かく見守ることも、misonoにとって治療のひとつになるかもしれない。

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