進化する糖尿病治療法

運動嫌いが運動せずに活動量を増やす…グッズを使ってみる

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写真はイメージ(C)PIXTA

 緊急事態宣言が出されたこともあり、極力自宅から出ないで過ごされている方も多いことでしょう。ぜひそうしていてほしいところですが、ようやく運動習慣が身に付いてきた方が、しばらくしないでいることで、「運動しないことが普通の毎日」に戻ってしまうのも心配です。先日、たまたま通りかかった店で自宅でも簡単にできる運動グッズを見つけたので、ある高齢の患者さんにお渡ししたところ、大変喜んでもらえました。

 別の患者さんからは、「こういうものがあるとは知りませんでした。実際に使ってみたら、案外楽しく使えることが分かりました。むしろテレビを見ながらできるので、私に向いているかもしれません。ほかにも、自分に合っているものを選んでみようという意欲が湧いてきました。外出自粛が解けたら、店に探しにいってみるつもりです」という意見もいただきました。

「食わず嫌い」ではないですが、「もともと運動嫌い」という人ほど運動するのに腰が重い傾向があります。嫌なことに時間を費やすのは、気が向きませんよね。その気持ちは私にも理解できます。ところが、始めてみたら意外にも続けられた、という人もいるんですよ。

 50代の男性は、今でも「運動する気はない」ときっぱり。ところが、この2カ月ほど、毎朝スクワットをしているそうです。きっかけを聞くと、ある朝、ふと思い立ち、本当になんとなく、スクワットをやってみたそうなんです。すると、5回もできた。ここがこの男性にとって大事なところなんですが、5回「しか」でなくて、5回「も」だったんです。

 運動が嫌いで、学生時代の体育の時間は嫌な思い出しかなかったと話す男性。学生時代を終え、運動を強制的にやらされることがなくなってからは、スポーツジムに通おうと思ったこともない。スクワットなんてできなくて当然、と思っていたのが、やってみたら5回もできたので、「結構できるな」とうれしくなった。息が上がり、膝がガクガクしたそうですが。

 その週末の土曜日、もう一回やってみようとスクワットをすると、やっぱり5回できた。日曜日もやると、5回できた。そのまま続けて毎日やるようになり、次第に最初に感じた「息が上がり、膝がガクガク」がなくなってきた。

 そこで6回に増やし、7回に増やし、今では20回スクワットをしているそうです。自己流のスクワットから始めたけれども、10回ほどできるようになってから、気になってインターネットで正しいやり方を調べたとのこと。膝が足のつま先より前に出ないようにし、また膝が内側に入らず外に向くように心掛け、それで20回やっているそうです。この男性にとってスクワットに対する認識は、あくまでも「運動」ではなく、「健康法」でもない。「楽しみ」になったからこそ、続けられているのかもしれませんね。

■一番いいのは「楽しくなって続けている」パターン

「運動」という言葉にとらわれすぎると、運動嫌いな人にはハードルが高くなるように常々感じています。だから私も「運動してください」と言うより、「体を動かす時間を増やしてください」「活動量を増やしてください」「5分でも10分でも無理なく、できる時でいいですよ」などと話すようにしています。

 ただ、それでも医者の私が言うと、患者さんも身構えてしまうのかもしれません。一番いいのは、スクワットの男性のように、「やってみたらできた。楽しくなって続けている」というパターン。「運動グッズを試してみたら、自分に合っていたので、続けている」というのもいいですね。しかし、そうなるためには、なんでもやってみないと始まらないんです。

「食わず嫌い」にならず、まずは東急ハンズやロフトなどのサイトで運動グッズ(健康グッズ、フィットネスツールなど)をチェックして、ちょっとでも興味を持ったものは、購入して使ってみる。値段もそう高くないものがたくさんあります。

 または、ユーチューブでいろいろなストレッチや体を動かす方法を紹介していますから、それらを見て試してみるのもいいかもしれません。

 体を動かすきっかけがどこにあるかは、誰にも分かりませんよ。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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