進化する糖尿病治療法

体重維持のポイントは常にチェックし太ったらすぐに対策を

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「通勤がなくなり活動量が激減した」

「仕事場にしているリビング、台所、トイレ、風呂の間を行き来するのが、1日の活動量」

「自宅に置いているお菓子を、仕事の合間につまんでしまう」

 こんなふうに話すのは、40代後半の女性。本格的なテレワークに入ったこの3週間で、気がつけば3キロ太っていたそうです。体重が数キロ増えた程度なら、食事内容に気を付け、少し活動量を増やすようにすれば、元の体重に戻せます。

 ポイントはすぐに対策を講じること。10キロより5キロ、5キロより3キロと、減らす体重が少ないほど、目標到達までの道のりは短い。かつ、苦労もしなくていい。

 中年以降のダイエットで何が難しいかというと、体重を落とそうと思ったら筋肉量もガクンと落ちてしまい、その落ちた筋肉量を取り戻すことが困難である点です。筋肉が落ちれば代謝が落ちて「太りやすい体」になるばかりか、高齢者になると転倒やケガのリスクを高め、寿命にも関係してきます。

 落とす体重が少なければ、筋肉量もそれほど減少せずに済みます。テレワークで活動量が減った方は、「太ったかも」と漠然と思っているのではなく、自分の体重の増減がどうなっているかを確認し、早め早めの対策を講じてください。もしかしたら、「ジムに行けなくなった」「家飲みが増えた」ことが、かえって良くない影響を与えているかもしれません。

■体組成計は風呂場の脱衣所に

 現状を知るには、体組成計が欠かせません。体脂肪率、筋肉量、骨量などを測定できます。自宅にない方は、早速購入を。現段階では大型量販店などに赴くことは推奨できませんので、通販を利用して手に入れてください。

 体組成計のチェックは、体形に自信がある方やダイエットが順調に進んでいる方には「数字が変化していくのを見るのが楽しい」もの。太ったかも、と思う方にとっては、「見るのが怖い」かもしれません。しかし、数字が変わる1週間後を期待して、購入したその日から測定してください。

 大事なのは、日常の動線のどこかに体組成計を置くことです。毎日測定するのは当たり前なのかもしれませんが、結構難しいものです。一番のお勧めは、風呂場の脱衣所です。服を脱いだときに、ついでに測定する。毎日の習慣になりやすいはずです。

 体重や体脂肪率の変動を毎日記録するだけで痩せられる「レコーディングダイエット」が流行したときがありました。「毎日記録するだけ」は本当に有効だと思います。何を食べたら体重が増えた・減ったかを確認でき、生活を見直すきっかけになります。外食の機会が減り、規則正しい生活を送りやすくなっている今であれば、体重増加の原因をより細かくチェックできますし、太らない生活にシフトしやすいのではないでしょうか?

 体重、体脂肪率などの毎日測定の習慣をつけるのと同時に、その結果を毎日記録する習慣もつけてほしいと思います。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、自由に外出や外食を楽しめるようになったら、「今夜は存分に食べて飲むぞ」という日も出てくるでしょう。毎日の記録をつけていれば、存分に食べて飲んだ翌日は体重が多少増えていても、その後しばらく節制すれば体重を落とせることが実感として分かると思います。繰り返しになりますが、怖いのは「知らないうちに体重が増えていた」です。

 体組成計の活用に加え、役立つかもしれないと思った方法が、ある50代女性が実践している「ウエストがジャストサイズよりややきつめのスカートを週1回ははく」。ほんの少し太っただけでもホックが留められなくなるほどのサイズのスカートを定期的にはくことで、自分を戒めているそうです。飲み会などで食べ過ぎてしまいそうなときにも、ジャストサイズよりややきつめのスカートをはくとか。男性でいえば、きつめに穴を開けたベルトを週1回は締める、ということでしょうか。

 テレワークの問題点は、体を締め付けない部屋着で一日中過ごしてしまい、体形の崩れ(つまりは体重増加)に気が付きにくい点かもしれませんね。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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