緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

肺炎だけだと思ったら大間違い 心臓の機能低下にも要注意

肥満の人は重症化リスクが高い
肥満の人は重症化リスクが高い(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症は1~12・5日の潜伏期間を経て発熱やくしゃみ、咳などの風邪症状を引き起こし、やがて肺炎を発症させる。多くの人はそう考えている。

 ところが肺炎は、新型コロナウイルス感染症が起こす主な疾患ではあるが、心血管疾患なども引き起こすことが分かってきた。

 今月17日に公開されたBMJ(英国内科学雑誌)には「新型コロナウイルス感染症を呼吸器疾患の病気だと考えると、86%見逃される」との解説記事が掲載されているという。「北品川藤クリニック」の石原藤樹院長が言う。

「新型コロナウイルス感染症の患者さんの中には心筋梗塞や心不全、不整脈などを起こす人も少なくありません。突然死する例も報告されています。ですから、心臓の機能にリスクがある人は注意が必要です」

 米国心臓病学会も「新型コロナウイルス感染の患者の中には、急性心外傷、不整脈、血圧低下、頻脈が報告されており、心血管の合併症も高い確率で起こっている」としている。新型コロナウイルス感染症の震源地である中国では、院内死亡54例の52%が心不全を併発していたなど、新型コロナウイルスと心血管疾患との関係を想起させる報告が多数なされている。

 日本でも警視庁が4月中旬までの1カ月間に死因が分からない「変死体」として扱った遺体のうち、死亡後のPCR検査で新型コロナウイルスへの感染が判明したケースが少なくとも6件あったことを公表している。その中には路上を歩いていた人の容体が急変した可能性があるというから、その人は急に心血管疾患を発症した可能性もある。

 そんな中、インドの研究者が新型コロナウイルス感染症と急性の心血管疾患との関連を検討した結果を「糖尿病とメタボリックシンドローム」(Diabetes Metab Syndr)に報告して、一部の医療関係者の間で注目されている。

 新型コロナウイルス感染症や心臓、心血管、不整脈をキーワードに発表された研究論文を調べたところ、患者全体の8~12%に心筋梗塞のマーカーとなる心筋トロポニンの顕著な上昇が認められたという。心筋トロポニンとは心筋が損傷した時に見られる心筋タンパク質のことだ。その原因は重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じように、心臓で発現したACE2に新型コロナウイルスが結合することでウイルス性心筋炎が起きたのではないか、と考えられるという。

「そうでなくても新型コロナウイルス感染症は糖尿病や高血圧、心血管・脳血管などに問題がある患者さんが感染すると、重症化しやすいことが知られています。心臓と肺は元来、密接なつながりがあり、肺炎で十分な酸素を摂取できなくなれば、呼吸を頻繁に行い補おうとします。すると脈拍も自動的に速くなる。既に心臓が弱かったり動脈が詰まっていたりすると、体中に血液と酸素を送るために、より心臓に負担をかけることになる。それが心臓へのダメージにつながるのかもしれません」

 欧米では糖尿病や高血圧になりやすい肥満の人は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いことが指摘されている。

 英国の集中治療室に運び込まれた新型コロナウイルス感染症672人のBMI(体格指数)を調べたところ、672人中231人が25~29の「太り気味」、208人が30~39の「肥満」、45人が40以上の「深刻な肥満」だったという。しかもBMI40以上の人は、56人中18人しか生き残れなかったという。米国でも同様の指摘がある。

「新型コロナウイルス感染症ではアジアより欧米の死者が目立ちますが、それは新型コロナが心臓の機能を低下させることと関係しているのかもしれません」

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