なぜ「基本再生産数」と「致死率」が注目されるのか?

トランプ大統領が経済活動再開を口にし始めた理由は…
トランプ大統領が経済活動再開を口にし始めた理由は…(C)ロイター

 東京など7都府県に緊急事態宣言が出てから2週間。コロナ疲れ、テレワーク疲れでうんざりしている人も多いのではないか。経済活動再開はいつになるのか。

 そこで注目されているのが「基本再生産数」(R0=1人の感染者から、新規の感染者が何人発生するかを示した数字)だ。専門家会議でもたびたび取り上げられ、これが1・0未満なら流行は収まりつつあることを意味する。

 現在、日本の新型コロナウイルスのR0は、2・5程度と考えられており、経済活動再開は程遠い状態だ。しかし、これは季節性インフルエンザと変わらないレベル。インフルエンザにはワクチンも治療薬もあるとはいえ、緊急事態宣言も、R0を下げるための経済封鎖も行われない。なぜか。長浜バイオ大学(医療情報学)の永田宏教授が言う。

「新型コロナウイルスの『致死率』が2%を超えるとされるのに対してインフルエンザのそれは0・1%程度と低いからです。つまり、感染してもインフルエンザはさほど深刻ではないと考えられているからです」

 現在、多くの国ではじき出されている新型コロナの致死率は、2%前後。致死率は検査数が少なければ高めに、多ければ低めに出る。そのため、先進諸国のなかで、人口当たりのPCR検査数がもっとも多い韓国の「致死率」を参考に、自国の「致死率」が高いか低いかを判断する傾向にある。

 ちなみに米国ジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、4月21日時点で韓国の致死率は2・2%だ。

 これに従えば、各国の致死率はおおむね妥当な数字ということになる。

 ところがここにきて新型コロナの致死率はもっと低いのではないか、との声が上がっているという。新型コロナウイルスは致死率が約10%のSARS(重症急性呼吸器症候群)のイメージが強く、致死率が高いという前提で考えられたのではないかというのだ。

 実際、ダイヤモンド・プリンセス号では、感染者712人に対し、死亡13人(致死率1・8%)。しかも乗客の大半が高齢者だった。また韓国でも、検査は希望者や濃厚接触者しか行わない。そのため、無症状感染者を大量に見落としていて見かけの数字が高くなっている可能性がある。

「最近の論文では、真の致死率は1%前後ではないか、という見解が増えています。なかには0・3%という、かなり低い数字を提案している論文もあるのです」

 イタリアやスペインの致死率は10%を超えているが、それは医療崩壊が進んだ結果、重症患者や重篤患者しか検査が行われておらず、見かけ上は高くなったからではないか。仮に致死率が0・3%とすれば、死者が2・4万人のイタリアでは800万人が感染したことになる。新規の感染者が減少し続けていることと考え合わせると、イタリアは集団免疫を獲得しピークを過ぎたともいえる。

 米国では、国民をランダムに抽出した抗体検査が始まっている。それによって真の感染率が分かれば、致死率も明らかになる。その数字いかんによっては、経済活動再開の糸口になる。

 最近、トランプ米大統領が、経済活動の再開を盛んに口にするようになった。それは、致死率が低く、感染がピークアウトになることを確信しているからかもしれない。

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