緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

新型コロナの「本当の致死率」はかなり低いのではないか?

ニューヨーク証券取引所でもマスク
ニューヨーク証券取引所でもマスク(C)ロイター

 新型コロナウイルス対策に大きな影響を与える数字は、「基本再生産数(R0)」と「致死率」だ。新型コロナウイルスのR0は季節性インフルエンザと同程度だが、致死率は数十倍も高いと考えられている。

 実際、インフルエンザの致死率が0・1%に対して、新型コロナは2%程度とされる。感染力が同じくらいなのに新型コロナウイルスの流行に対して非常事態宣言を出している理由のひとつがここにある。だからこそ、各国は厳しい対応を続けているのである。

 だがここにきて、肝心の致死率が大きく揺らぎ始めている。

 注目は米国ニューヨーク州が住民3000人を対象に行った抗体検査。その結果が24日に出た。陽性率(いままでに新型コロナに感染した人の割合)が13・9%だった。これを同州の人口約1945万人に当てはめると、270万人がすでに感染していた計算になる。ところが、PCR検査で確認された感染者数はわずか26万人。感染者の、たった1割しか把握できていなかったことになる。また死亡数は1万5000人余り(致死率0・56%)。これはインフルエンザより高いが、新型コロナウイルスが未知のウイルスと恐れられた当初にいわれていた致死率の4分の1に過ぎない。

 感染の爆心地といわれるニューヨーク市に限れば、感染率は21%。人口840万人に当てはめれば180万人近くが感染したことになる。

 一方、同市の22日までの死者は1万1267人。致死率は0・63%だ。医療崩壊下でも、致死率は高くなかったのだ。

 日本はどうか。実は21日に慶応義塾大学病院が発表した「新型コロナウイルス感染症に関する当院の状況について」と題した発表のなかに、重要な文言が書かれている。

 4月13日から4月19日の期間に行われた術前および入院前PCR検査において、新型コロナウイルス感染症以外の治療を目的とした無症状の患者さんのうち5・97%の陽性者(4人/67人中)が確認された。

 PCR検査は、検査時点で体内にコロナウイルスがいるかどうかを判定するのには適しているが、過去に感染したかどうかは分からない。それでも陽性率が約6%もあった。抗体検査をしていたら、陽性率が10%を超えていただろう。

 対象者が少数だから断言はできないが、ニューヨークの件と考えあわせると、都内ではすでに10人に1人(1400万人のうち140万人)が新型コロナに感染したと考えたとしても驚くにはあたらない。ところが発表されている東京都の感染者は、23日時点で3572人だ。いまの検査体制では、氷山の一角どころか、ほとんど何も見えていないのに等しいのではないか。

 東京都の死者は、23日時点で87人なので、140万人と仮定した場合は致死率は0・006%となる。現場の医療従事者や患者本人の話から、一度発病すると、症状がかなり厳しいことが分かる。とはいえ致死率を見る限りは、社会全体がもう少し冷静に行動した方がいいのではないか。

(長浜バイオ大学医療情報学・永田宏教授)

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