みんなの眼科教室 教えて清澤先生

新型コロナウイルス感染で眼が痛くなるのは本当なのか?

清澤眼科医院院長(右)/
清澤眼科医院院長(右)/(C)日刊ゲンダイ

【Q】新型コロナウイルス感染症の患者で目が痛くなることがあると聞きました。本当でしょうか?

【A】コロナ感染者に結膜炎が相当の頻度で見られることが、世界中で報告されています。そこに、目の「痛み」を症状のひとつとして加えたいという人が現れました。そのため、眼科医も、「痛み」を訴える眼症状の患者さんの中に新型コロナウイルス感染患者が、交じっているのではないかと恐れています。

 目の痛みが新型コロナ感染症と関係すると言い出したのは医師ではありません。グーグルの元データサイエンティストです。「米国の感染多発州では『my eyes hurt』(目が痛む)とグーグル検索する人が増えている」ことに気がつき、感染者は最初に眼科医を訪ねる可能性もあると分析。その投稿を米ニューヨーク・タイムズ紙が記事にしました。私も読みましたが、詳しい計算根拠のアルゴリズムも説明されていて、そのような推論の立て方ができるのかと驚かされました。

 記事の中では新型コロナウイルス感染症が目にどのような影響をもたらすかはまだよくは分かっていないとしていますが、目周囲の炎症がこの感染症の症状のひとつだと示唆する研究も紹介しています。

 例えば米国医師会報の眼科専門誌に発表された研究報告です。中国の研究チームが新型コロナウイルス感染症の患者38人を調べたところ、12人に目の異常が認められたそうです。涙の量が増えたり、結膜が充血したり腫れたりするなどの異常が、新型コロナ感染症の症状がより進行した患者に多かったというのです。また新型コロナ患者の治療に携わっている看護師は、重症患者の多くに目周囲の発赤が見られたと言っています。ある高齢者施設の勤務者は「目の充血は全ての患者に見られた症状だ。アレルギーのように白目が充血するのではなく、目の周りに赤いアイシャドーを塗っているような感じにも見えた」と語ったそうです。新型コロナウイルスに感染した患者の1~3%に、こうした目周囲の赤みが表れると考えられています。

 世界的に権威のある医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表された研究報告によれば、中国の新型コロナ感染症の患者1000人以上を対象にした調査では、患者のおよそ0・8%に「結膜の充血」が見られたということです。

 ただし、ニューヨーク・タイムズ紙は、新型コロナウイルス感染症と判断するには単に「充血」や「涙量の増加」だけでなく「痛み」を伴うことに注目しています。

 新型コロナウイルス感染症の発病に関連する検索ワードの上位は、1位「においの喪失」、2位「発熱」、3位「悪寒」、5位と6位の検索は「鼻づまり」と「下痢」でした。いずれも、新型コロナウイルス感染症で出現するとされてきた症状と一致しています。しかし、4位の「目の痛み」という検索結果は驚きです。

 また「目の痛み」というキーワードを多く検索しているのはニューヨーク、ニュージャージー、ルイジアナ、ミシガンなどの新型コロナウイルス感染症が多かった州だったそうです。

 検索キーワードで病気の症状がわかる時代になるなんて、思ってもみなかったことです。

清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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