Dr.中川 がんサバイバーの知恵

がん闘病中の大島康徳氏は高熱でもPCR陰性 原因は腫瘍熱か

大島康徳さん
大島康徳さん(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症を巡っては、PCR検査のハードルの高さが指摘されています。13日に多臓器不全で亡くなった大相撲の勝武士(享年28)もそうでした。先月4日に発熱症状が見られたものの、都内の病院に入院できたのは8日。PCR検査の陽性確認は10日でした。

 ステージ4の大腸がんで闘病中の元日本ハム監督、大島康徳さん(69)も今月7日のブログにこうつづっています。

「はっきり申し上げてとっても!(PCR検査の)ハードルは高かったです。私は、69歳。ステージ4の癌患者。抗がん剤治療を受けている。高熱が続いている。それを伝えても保健所の答えは『対象ではありません』でした」

 3月初めに妻がかけた電話では断られたものの、あきらめずに大島さんがかけたところ保険医につながり、検査が受けられたとのこと。結果は、陰性だったといいます。こういう話を聞くと、皆さん不安でしょうから、がん患者の対応をおさらいしましょう。

■がん患者は異常があればすぐに検査を受けるべき

 厚労省は8日、新型コロナ感染が疑われる人の受診の目安を変更しました。「37・5度以上」という条件は削除されています。

 新基準は2つ。①比較的軽い風邪症状がある②息苦しさ、強いだるさ、高熱など強い症状のいずれかがある。これらに該当すれば、すぐに「帰国者・接触者相談センター」に連絡を。①でなおかつ「高齢者」「糖尿病、心不全、呼吸器疾患あり」「人工透析」「免疫抑制剤や抗がん剤の使用」「妊婦」の条件が重なった場合も、すぐに電話するのが大切です。

 大島さんが電話した3月は変更前で混乱していた時期ですが、今ならがん患者は症状があれば、遠慮なく連絡して早めに検査を受けられるはずです。

 さらに検査の追い風がもうひとつあります。抗原検査のスタートです。抗原検査は、インフルエンザなどの診断に広く使われているもので、新型コロナ用のキットが13日付で薬事承認されました。これなら30分ほどで結果が分かるので、検査数はグンと伸びるでしょう。厚労省は今月中に感染者数が多い5都道府県を中心に全国に広げるとしています。

 では、最後に大島さんの高熱の原因について。「腫瘍熱」の可能性があるのではないかと思われます。腫瘍そのものによる発熱で、感染などによりません。進行がんによく見られます。

 腫瘍熱の公式な診断基準はありませんが、「37・8度以上の発熱が1日1回以上」「発熱の期間が2週間以上」などの項目が掲げられることもあることから分かる通り、従来の「37・5度以上」「4日以上」という従来の基準を満たしやすいのが腫瘍熱です。

 今の局面ではとても紛らわしいですから、がん患者は異常があればすぐに検査を受けるべきです。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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