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血液と「貧血」<2>進行が遅いと極度の貧血でも症状表れず

写真はイメージ
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 前回、貧血が生じる要因は、大きく分けると①失血(大量に出血)②赤血球などの産生不足にあると述べました。産生不足にはさまざまな状態がありますが、鉄分の供給不足が原因となることが一般的です。

①女性では月経時の出血が多い場合。

②胃潰瘍やがんで、胃や腸や子宮などから出血が続く場合。

③年齢が若く、急激な成長期などで必要となる鉄分を食事からの摂取で補充できない場合。

 このようなときには、「鉄欠乏性貧血」が起こりやすくなります。

 もちろん、貧血が起こると、体も黙ってはいません。腎臓では、低酸素誘導因子が出て、エリスロポエチン(赤血球の産生を促進する造血因子の一つ)を作ります。赤芽球前駆細胞におけるエリスロポエチン受容体からのシグナルを介して、赤血球造血を刺激することになります。

 このあたりのメカニズムは少し難解ですが、簡単に言いますと、貧血を改善するために臓器が赤血球の産出量を増やしてくれるのです。

 また、貧血の重症度や進行の速さに個人差があり、症状もさまざまです。

 貧血の病態が軽く、とくに進行が遅い人は、たとえ極度の貧血でも症状が全く表れないことがあります。それに、運動をしたときだけ貧血の症状が見られることがあります。重症貧血は、横に伏せ、安静にしても、症状が表れるケースも少なくありません。

■運動したときにだけ症状が出る場合も

 では出血などで、貧血が急速に進んだ場合はどうでしょうか。貧血の程度が軽度、重度に関係なく、症状が強く表れます。

 これらの症状は、軽度の人なら疲労感や脱力感を覚え、顔色が青白くなったりします。

 さらに貧血が進行しますと失神、目まい、のどの渇き、あるいは発汗、脈も弱くなり、呼吸などが速くなる症状が加わってきます。

 重度の貧血でも、とくに脚の血行が悪くなっている人や、肺や心臓に特定の病気を抱えている人は注意しなければなりません。

 運動中にも痛みを伴った筋けいれんが下腿に発生するなど、息切れや胸痛などの症状が表れます。

 対策としてこのような症状を自覚する前に、まず定期的な血液検査です。検査で貧血を見つけることが可能です。治療は貧血の要因によっても異なりますが、症例が多い「鉄欠乏性貧血」は鉄剤を投与することになります。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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