カビは健康の大敵…対策には次亜塩素酸ナトリウムがいい

梅雨時期はカビに注意
梅雨時期はカビに注意(C)日刊ゲンダイ

 例年以上の大雨に見舞われている今年の梅雨。部屋の中はジメジメ、ムシムシして、いたるところにカビが見られる。カビは人体にどんな影響を与えているのだろうか? 日本で最大の病原真菌、放線菌(カビ様の微生物で、糸状の菌糸を形成)の保存施設を持ち、カビそのものはもちろん、その対策などの研究をしている千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志准教授(バイオリソース管理室長)に話を聞いた。

 浴室や台所等に発芽し成熟したカビは、やがて大量の胞子(2~10マイクロメートル=1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)をまき散らすことになる。

 形は球形、楕円形、棒状、三日月状とさまざまだが、浮遊し、風や人によってほかの場所にも運ばれる。

 発育の環境がいいと再びそこで発芽して増殖し、目に見えるほどの塊(集落)を形成してしまう。

 食品ならデンプンや糖分を含む餅、パン、菓子類などを好む。例えば、冷蔵庫の奥の方から買い置きのパンやリンゴを取り出すと、アオカビ(ペニシリウム)や、コウジカビ(アスペルギルス)が、張り付いているケースがよくある。カビの生えている部分を切り取り、捨てるのがもったいないからと、残りの食品を口に含む主婦も少なくない。こうしたカビの対応策は、果たして正しいのだろうか。

「カビの生えたパンやリンゴが、どこまでカビに毒されているか、確かめようがありません。もし、本格的に分析するとしたら、高額な研究費が必要でしょう。カビが付着した食品は、全部に毒されている確率は低いでしょうけど、ゼロではありません。危険性を考慮したら、食べない選択が賢明です」

 矢口准教授が所属しているバイオリソース部門では、主に「アスペルギルス」や関連菌における形態や、系統解析による分類学的研究を行っている。

 わかりやすく言うと、毒性を持つカビが、人体にどのような病気を招くかを研究している。

「カビが発する胞子をたくさん吸いますと、咳、くしゃみ、鼻水といった症状が出る呼吸器系アレルギーが起こります。最悪、免疫が落ちた患者には、胞子は肺細胞の中まで入り、肺炎を招くこともあります。このような病態を起こさないためにも、カビという敵の特性を知っておくことが大切です」

 1立方メートル当たり、空気中に100~1000個ほどの胞子の源は、成熟したカビの塊・菌糸である。

■カビが成長する環境条件は3つ

 しかし、家からこのカビを全て取り除くのは至難のワザ。ゼロにはできない。そのために、いかにカビの増殖を抑えるかがカギになる。

 カビが発芽し成長する主な環境条件は3つで、①温度(20~30度)、②湿度(60%以上)、③栄養(食べ物のカス、皮脂、せっけんカス、ホコリなど)だ。

 この3つの条件が整うと早いカビでは3日、クロカビ(浴室、モルタルなど)でも、7日ほどで目に見えるほど大きく成長してしまう。

 カビの予防対策の基本は、「部屋はこまめに窓を開けて換気をよくしてやり、湿気を外に出す。カビの栄養になるホコリ等の駆除は、まんべんなく掃除をすること。また、カビを見つけたら、次亜塩素酸ナトリウムという成分が入っているカビ取り剤で取り除くといいでしょう」。

 矢口准教授は、カビ対策の知恵として、「ワサビ」の効能についても少し触れた。

 アリルイソチオシアネート(辛味の成分)が含まれているワサビには抗菌・防カビがある。

「食品を入れるタッパーなどにワサビを入れておきますと、カビが発芽しにくくなります」

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