新型コロナ後遺症の正体

入院患者の過半数が訴える疲労感 背景で囁かれる意外な病名

新型コロナウイルスに感染し退院後も体調不良が続く人を対象にしたリハビリ施設で検査を受ける元患者(手前)=イタリア・ジェノバ
新型コロナウイルスに感染し退院後も体調不良が続く人を対象にしたリハビリ施設で検査を受ける元患者(手前)=イタリア・ジェノバ(C)ゲッティ=共同

 新型コロナウイルス感染症は日本人にとって本当に脅威なのか? 全国的に新規感染症が増え続けるなか、そんな疑問を抱く人が増えている。100万人当たりの死者数では、日本を含む東アジア諸国が欧米諸国より2けたも少ないからだ。

 米ジョンズ・ホプキンス大の調査などに基づく「MEDRY」の8月7日のデータによると、米国483・69人、英国683・69人に対し、日本は8・17人(クルーズ船を除く)、韓国5・91人、中国3・25人などとなっている。

 そのため「日本経済を沈没させないため、新型コロナは特殊な風邪と割り切るべき」との主張も出てきたが、本当にそうか?

「私はそうは思いません。国立国際医療センターが7月7日までに新型コロナと判定された全国の入院患者を対処にした死亡率は7.5%。一方、2009年に流行した新型インフルエンザのそれは0・16%でした。死亡リスクは決して低くありません。しかも、世界中で新型コロナウイルス感染後の後遺症が注目されはじめており、急性感染症状が治った後にも、疲れや息苦しさなどの症状が2カ月以上も続く人がいて、厚生省も8月から研究に着手しているのです。現段階で軽く考えるべきではありません」

 2020年7月に「米国医師会雑誌(JAMA)」に発表された、イタリア・ローマのジェメッリ大学病院の調査結果では、患者143例において新型コロナ感染症発症から約2カ月の時点で87・4%の患者が何らかの症状があることが報告された。

 米国での3~5月にかけての350例の入院患者の検討でも、3週後に正常化は39%にすぎないと報告されている。外来患者292例でも、正常化は65%だった。

 では、患者はどのような症状を訴えているのだろうか? ジェメッリ大学病院の調査対象となった患者の平均年齢は56・5歳、平均入院期間2週間。無症状は18例(12・6%)、患者の32%は1~2つの症状があり、55%は3つ以上の症状が見られた。患者の44.1%でQOLの低下が見られ、特に倦怠感(53.1%)、呼吸困難(43.4%)、関節痛(27.3%)、胸痛(21.7%)が目立った。他に咳、嗅覚異常、ドライマウスやドライアイ、鼻炎、目の充血、味覚異常、頭痛、喀痰、食欲不振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢といった症状もみられた。

「倦怠感を引き起こす病気はさまざまありますが、現時点で新型コロナの後遺症に関係するとみられているのが、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の発症です、ドイツでも4月にCOVID-19により死亡した6人の病理解剖検査で、何と全員に脳炎と髄膜炎が認められたとのことです。生前に診断がつかない脳髄膜炎がこのような症状に関係しているかもしれません」

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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