マスターベーションをして射精感(オルガズム)はあるけど、精液が「出ない」または「少ない」ということはありませんでしょうか。
精液検査(2~7日の禁欲後)で調べる精液量の正常値は「1.5ミリリットル以上」ですので、1ミリリットル未満ならあきらかに「少ない」といえるでしょう。
その場合、マスターベーション後の排尿を紙コップなどに採取して、観察してみてください。尿が白く濁っている、ドロッとしたものが含まれているようなら、射精した精液が尿道口から出ずに、膀胱内に逆流している可能性があります。これを「逆行性射精」と呼びます。
原因は、糖尿病による末梢神経障害、脊髄損傷、前立腺の手術、直腸がんなどの骨盤内手術などがあります。また、高血圧や前立腺肥大症の治療薬(α1遮断薬)などの薬剤の副作用として起こる場合もあります。いずれにしても手術や薬剤によって、射精に関係する自律神経の働きが障害されることで起こります。
自律神経には、緊張しているときに優位になる「交感神経」と、リラックスしているときに優位になる「副交感神経」があります。逆行性射精は交感神経の方が障害されると起こるのです。
実は、精液も尿も同じ1本の尿道を通って出るのですが、その担当する神経はまったく別なのです。つまり射精は交感神経の働き、排尿は副交感神経の働きによって行われているのです。
勃起は副交感神経によって起こりますが、性的興奮が高まり射精する瞬間に一気に交感神経優位に切り替わります。この交感神経の働きによって、射精時に前立腺と膀胱のつなぎ目(膀胱頚部)が閉じるので、精液が膀胱に逆流しないで射出できるのです。
一方、排尿時は副交感神経が優位になり、膀胱頚部や前立腺部尿道がゆるむ(開く)ことで尿を出すことができるのです。だからリラックス状態でないと気持ちよくスッキリと出せません。公衆トイレの小便器の前に立ち尿を出そうとしているときに、急に隣の小便器に人が立つと尿が出にくくなります。これは突然の人の気配に緊張して交感神経が働き、膀胱頚部が閉じるからです。
逆行性射精は男性不妊の原因になりますが、子づくりを望んでいなければ特に治療の必要がありません。不妊治療は、膀胱頚部を閉鎖する作用のある交感神経刺激薬や三環系抗うつ薬などの薬物療法。または膀胱内の精子を回収して、人工授精を行う方法があります。
専門医が教える パンツの中の秘密