おしっこは「腎臓」で作られ、「尿管」「膀胱」「尿道」を通って排出されます。このおしっこの通り道(尿路)の部位に細菌がすみつき、増殖して炎症を起こしたものを総称して「尿路感染症」といいます。
尿路感染症の多くは、尿道口から侵入した細菌が尿路をさかのぼって感染する「上行性感染」です。
細菌が尿道にすみつけば「尿道炎」、膀胱にまで行けば「膀胱炎」、さらに細菌が尿管をさかのぼって腎臓に感染すれば「腎盂(じんう)腎炎」を発症します。
ただし、男性の場合には女性にはない「前立腺」が尿道と膀胱の間に存在します。ですから男性は「前立腺炎」も加わります。また、男性と女性の尿路感染で大きく違うのは、男性は性感染症(クラミジアや淋菌=りんきん)による「尿道炎」の発症が多く、女性は「膀胱炎」(性感染症でない)の発症が多いというところでしょう。
これも、男女の体の構造上の違いによるものです。男性の尿道は「生殖器」の役割(精液の通り道)も兼ねています。そのため性感染症による尿道炎が多いのです。
ただし、クラミジアや淋菌だけでなく、大腸菌や腸球菌などの腸内細菌、皮膚や粘膜の常在菌、マイコプラズマなどの細菌も尿道炎(非クラミジア性非淋菌性尿道炎)の原因になります。
一方、女性はペニスを受け入れる「腟」と「尿道」が別々ですので、クラミジアや淋菌が尿路に感染しにくいのです。ただし、生理や尿失禁のナプキンについた細菌から尿道炎を引き起こすことはあります。女性の子宮に侵入したクラミジアや淋菌も上行性感染しますので、放置すると子宮頚管炎や卵管炎を引き起こします。
女性が膀胱炎になりやすいのは、男性と比べて尿道が短く、尿道口が肛門や腟口に近いので大腸菌などの細菌が侵入しやすいからです。急性膀胱炎は、女性の5人に1人が経験しているといわれています。女性は男性よりも膀胱炎になりやすいわけですから、腎盂腎炎の発症も男性よりも多いとされています。
男性の場合は尿道が長く、細菌が奥へ行きにくいのですが、さらに「尿道側管」という仕掛けもあります。尿道粘膜に袋小路になった管がいくつもあり、侵入した細菌を落とし込むのです。
しかし、このような感染防御機構も年をとると低下してきます。前立腺肥大などによって尿量や尿の勢いが衰えると、尿によって細菌を洗い流す力が弱くなるからです。そのため大腸菌などによる前立腺炎が起こりやすくなります。
専門医が教える パンツの中の秘密