病の克服は患者に聞け

網膜円孔・網膜裂孔<4>100%近い確率で網膜剥離の予防が可能

写真はイメージ
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 自宅から徒歩で10数分というA眼科病院で高野稔さん(仮名。埼玉県内在住=自営業・70歳)は、盆休み「網膜円孔・網膜裂孔」のレーザー手術を受けた。

 手術から1週間後、経過観察のために、同病院を再訪した。最初の診察(検査)から間を2日置いてレーザー手術を受け、これで3度目の通院である。

 待合室のソファには、間隔をおいてガムテープで×印が貼られており、“社会的距離”(ソーシャルディスタンス)が励行されている。待合室に入り切れない外来は、廊下に並ぶパイプ椅子に座って待たされていた。

「高野さん~、点眼液を挿入します」と、言われ、ソフアに座ったまま、瞳孔が広がる目薬をさされた。

 10分ほどして、ペンライトで瞳孔の広がり具合を確認され、診察室に入った。診察の担当医師は、若い院長である。診察内容は最初の診察検査とほぼ同じで、機器に顔を乗せ、あごを固定する。

 レンズを通してまぶしいライトが照らされ、「屈折検査」、「角膜曲率」や「精密眼底」、眼の奥を見る「汎網膜硝子体検査」が行われた。屈折検査は、焦点が網膜上に正確に合っているかどうかを診る。また、角膜の曲がり具合、水晶体の厚みや、眼球の前後軸の長さを診る検査も行われた。

 レーザー手術が行われ、局部の凝固斑が固まり、接着効果が出るまでに、約1週間程度かかると言う。

「網膜に穴が開いていると診断されても、それまで痛みはないし、ほか、なんの自覚症状も不自由もありませんでした。だから、レーザーで穴の周辺を焼いて(凝固斑)改善しましたと説明されてもピンときませんでしたね」(高野さん)

 ただ、手術後の気持ちの問題なのだろうか、それまでぼやけて見えていた新聞の活字が、少し鮮明に見えるようになったという。

 院長は「このレーザー治療は視力回復を目的にしたわけではありません。事例として術後の患者に、網膜剥離が発生したケースはありますが、100%に近い確率で、網膜剥離を予防することが可能です」と説明した。

 その点はほっとしたが、院長は一呼吸をおいて、高野さんにこう付け加えた。

「今回は右の眼の治療でしたが、左目はまだ穴が空いておりませんが、実は左目の網膜も薄くなっています。しばらく経過観察が必要でしょう。1か月後に、来院してください」

「今度は左目?」

 せっかく、右目の治療が終わったのに、まだ通院しなければならない。   

 診察室を出て、高野さんは受付で診察料金の支払いを済まそうとすると、「2割負担の方は同月、同じ病気の診療報酬支払の規定があって、今回はゼロ円で結構です」と言われた。よく理解できなかったが、診察料金の無料は嬉しい。自転車で帰宅途中、対向車のライトが異常にまぶしい。点眼液で瞳孔が、いつもより大きく開いているからだ。

 高野さんは帰宅すると、すぐに水道で眼をじゃぶじゃぶと洗った。

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