専門医が教えるアルツハイマー予防で大事な「カキクケコ」

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 9月はアルツハイマー月間。国際アルツハイマー病協会とWHO(世界保健機関)と共同で9月21日を「世界アルツハイマーデー」と指定し、今月はアルツハイマー対策に関するさまざまな取り組みを実施しています。

 2019年12月、米バイオジェン社が画期的な臨床試験データを発表しました。日本の製薬会社エーザイと開発しているアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が、早期のアルツハイマー病患者を対象にした臨床試験で、認知機能の低下を2割ほど抑えられるという結果が出たというのです。今年7月には、米国食品医薬品局(FDA)へ生物製剤ライセンス申請の申請を完了したと発表しています。もし、この薬が承認されれば、アルツハイマー病そのものへの効果が期待できる初めての治療薬となります。

 一方で、アルツハイマー病予防には、日頃の習慣も大事です。菅原脳神経外科クリニック院長で認知症に詳しい脳神経外科医の菅原道仁医師が提案してくれたのは、「カキクケコ」の実践です。

カ=噛む  よく噛みましょう
キ=聞く  難聴があればそれを改善し、人の話に耳を傾けましょう
ク=口もと 口もとを持ち上げ、笑顔でストレスを吹き飛ばしましょう
ケ=血管  血管を健康に保てるよう、生活習慣病対策に努めましょう
コ=交流  人との交流をたくさん持ちましょう


「歯を健康に保ち、よく噛んで食べる生活は脳に良い影響を与えます。聞く能力も重要で、国際アルツハイマー病学会は、難聴を『予防できる認知症危険因子の中で最も大きなもの』と指摘しています。他人の意見を聞く柔軟性も必要です。口もとというのは、ストレスホルモンが認知症に関係しているので、いつも笑顔で。多少物忘れがあっても、気にしないことです。さらに、生活習慣病対策に努めて動脈硬化の進行を抑制し、血管を若く保ちましょう。さまざまな人との交流は、認知症対策に非常に役立ちます」(菅原医師)

 ステイホーム時間が増えた今は、複数のタスクを同時進行させる家事全般も、認知症対策に有効だと言います。そしてもう一つ。食事も認知症対策で忘れてはいけないポイント。

「青背の魚に多く含まれているEPA、DHAは、血管老化を防ぐ成分です。また、最近注目されているのは、カマンベールのBDNF上昇効果です」(菅原医師)

 BDNFとは、脳由来神経栄養因子のこと。認知機能との関連が報告されている神経栄養因子で、加齢や認知症で低下すると報告されています。

 東京都健康長寿医療センターらが行った研究では、東京都在住の70歳以上の高齢女性689人のうち軽度認知障害と判断された71人を対象に、カマンベールチーズを食べた群と、プロセスチーズを食べた群とで、血中BDNF濃度の変化を調べました。

 すると、1日2ピース、3カ月間カマンベールチーズを食べた群は、1日2ピース、3カ月間プロセスチーズを食べた群より、血中BDNF濃度の変化が有意に高い値を示しました。

 カマンベールチーズにはタンパク質も豊富。菅原医師の提唱する「カキクケコ」の「コ」実現には、生き生きと活動できるための筋肉も必要です。そういった意味で、カマンベールチーズはおすすめ。おいしく食べて、アルツハイマー病対策に生かしましょう。

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