コロナ禍のインフルエンザ対策<下>熱が出たらどうすべきか

熱が出たら早めに医療機関に相談を
熱が出たら早めに医療機関に相談を

 今年の「季節性インフルエンザ」の流行シーズンに「発熱」があった場合、どのように医療機関を受診すればいいのか。発熱やせきなどの症状は、「新型コロナウイルス感染症」と区別がつかないからだ。

 日本感染症学会は今年8月に診療所や病院の外来診療向けに、「臨床症状のみで両疾患を鑑別診断するのは困難」と指摘し、「原則として、新型コロナの流行がみられる場合には、インフルエンザが強く疑われる場合を除いて、可及的に両方の検査を行うことを推奨する」と提言している。

 しかし、新型コロナのPCR検査は実施している施設もあれば、実施していない施設もある。また、PCR検査は3月6日から保険適用になったが、無症状の人に対してのみ自費で行っている施設も多い。医療機関によって何がどう違うのか。保険と自費の両方で唾液によるPCR検査を行っている「池袋大谷クリニック」(東京都)の大谷義夫院長が説明する。

「現在、新型コロナを疑う患者さんのPCR検査の検体を採取しているのは、①『保健所』②『帰国者・接触者外来が置かれている医療機関』③『自治体と委託契約を結んでいる医療機関』④『医師会が自治体と設置しているPCRセンター』です。一般のクリニックや病院の外来診療でPCR検査を行っている施設は③に該当します」 なぜ、PCR検査がどこの医療機関でも簡単に受けられないかというと、新型コロナの検査は感染症法に基づく「行政検査」の対象となっているからだ。

 行政検査になると、検査の必要性は保健所が疫学調査の観点から判断する。それを民間検査機関の参入を促し、検査件数を増やすためにPCR検査や抗原検査が保険適用になった経緯がある。それによって医師が必要と判断すれば、保健所を経由せずに民間検査機関に検体の検査を依頼することができるようになったわけだ。

 ③の「委託契約」とは、自治体から行政検査の委託を受けた医療機関ということになる。委託契約を結ぶには、感染防止の設備や対策、普通の患者と新型コロナを疑う発熱患者が一緒にならないように、空間を分けたり、診療時間を分けたりする必要がある。それらの条件を満たす施設でなければ委託契約は結べない。

■身近な医療機関に早めに相談を

 行政検査の場合、検査費用の自己負担分は公費で補助されるので無料。一方、自費(2万~4万円台)のみのPCR検査を行っている施設は、発熱などの自覚症状がなく、濃厚接触者にも該当しない人を検査の対象としている。たとえば出張前や地方に帰省する前に検査を受けておきたいと希望する人たちだ。

 PCR検査には、鼻に綿棒を入れて検体を採る「鼻咽頭ぬぐい法」もあるが、せきやくしゃみが出るリスクが高いので、ほとんどの一般のクリニックでは唾液によるPCR検査を採用している。

 このように、新型コロナとインフルエンザの検査を同時に受けられる医療機関は限られる。

 さらに懸念されることがある。

「従来、インフルエンザの検査は一般のかかりつけ医で受けられましたが、新型コロナの流行でインフルエンザの検査も行わない施設も出てくるかもしれません。インフルエンザの迅速抗原検査は鼻咽頭ぬぐいで行うからです」(大谷院長)

 また、発熱のある患者はPCR検査で陰性が確認されないとインフルエンザの検査を受け付けない施設も出てきそうだ。発熱があったら早めに身近な医療機関に受診の仕方を相談することだ。

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