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頭の違和感 軽いくも膜下出血は医師も見分けられない?

脳神経外科医の鮫島哲朗氏
脳神経外科医の鮫島哲朗氏(提供写真)

 すぐさま命に直結する脳の病気がくも膜下出血です。脳の太い血管にできた脳動脈瘤という“こぶ”が破れることで、脳の表面を覆うくも膜下腔に、ある日突然出血が起きる病気です。適切な処置が行われたとして、一般的には後遺症なく元の生活に復帰するのは約50%で、何らかの後遺症が残ったり、亡くなられる方が残りの50%といわれています。

 典型的な症状としては、後ろからバットで殴られたようなかつて経験したことのない激しい頭痛です。頭痛と共に意識がなくなり昏睡状態で救急車で運ばれる患者さんは診断が容易ですが、比較的軽い頭痛で本人が1人で歩いて外来受診された場合は、脳神経外科医でも正直見分けるのが難しいことがあります。

 つまり、CTやMRI、髄液検査などを行わないと診断がつかず、単なる頭痛と診断されて鎮痛薬のみ処方されて帰されるケースは少なくありません。そして自宅に戻ってから再出血して重体になったり、亡くなってから「あの時の頭痛が前兆だったのかもしれない」と思い返される方がいらっしゃるのが現状です。

 私の病院では、万が一に備えて頭痛を訴える患者さんには極力検査を受けていただいています。普段は頭痛持ちでない方が違和感を覚えたのでしたら、最近は小さなクリニックでもCTやMRIの設備が整っていますし、大学病院のように予約に苦労したり待ち時間も長くないですから、最寄りの「脳神経外科」もしくは「脳神経内科」を訪ねてください。

 保険適用なら3割負担でも1万円以内で受けられます。もちろん、日頃から1~2年に1回は脳ドックを受けて、ご自分の脳の状態を確認しておくことが将来の脳卒中の予防につながります。

 一般的に頭痛で診察に来られる患者さんに最も多いのが「筋緊張型頭痛」と呼ばれるタイプ。側頭筋の緊張などが原因で、こめかみが締め付けられるような痛みを訴えられます。ストレスや疲労、寝不足、気候の変化、肩凝りなどがきっかけになります。体質もありますので、完全に症状をゼロにすることはできませんが、適度な運動、質の高い睡眠と休養を工夫してもらい、日常生活に支障をきたす場合は、鎮痛剤等で緩和させる治療が必要です。

 くも膜下出血や脳動脈解離などの重篤な病気と鑑別を要するのが「後頭神経痛」。耳の後ろの後頭部に強い痛みを訴えられます。急激に痛むので、救急車で駆け付ける人もいます。気温が下がる朝方や寒くなってきた今の時季に増えます。鎮痛剤が効かないほどの痛みの場合、神経ブロックといって後頭部に麻酔薬を注射する治療を行います。

 最も厄介なのは「片頭痛」ですね。体質や遺伝によるものが大きく、ストレスや飲酒、寝不足を契機に起こります。一般的には子育て世代の女性が多い印象がありますが、受験など強いストレスで発症する小中学生も増えています。片頭痛は通常の鎮痛剤では効果が乏しい場合がほとんどですので、専用の内服薬が必要で、かつ薬を飲むタイミングが重要になります。慢性的な頭痛の場合、内服薬は病院で処方してもらうことをお勧めします。

 頭痛で悩む方は一度、脳神経外科で診察を受け、自分がどのタイプか判断してもらいましょう。市販の薬でその場をしのぐ方は多いと思いますが、長期的に服用するには頭痛のタイプや体質に合ったものを選ばなければ上手な付き合い方ができないことになります。

▽鮫島哲朗(さめしま・てつろう)宮崎県出身。1990年3月宮崎医科大学(現宮崎大学)医学部卒業後、同脳神経外科入局。2002年4月に米国Duke大学脳神経外科、10年2月にNTT東日本関東病院脳神経外科主任医長を務め、13年4月から浜松医科大学脳神経外科勤務。さまざまな医療現場で活躍するスーパードクターたちが出演の公式YouTubeチャンネル「SuperDoctors ―名医のいる相談室―」にて解説します。

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