蕁麻疹は5人に1人が経験 重症でも9割が良くなる治療法

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 眠れない、集中できない……。蕁麻疹を経験したことがある人は、そのつらさを容易に想像できるだろう。生活の質(QOL)を著しく下げる蕁麻疹の治療について、重症蕁麻疹患者も多数診ている日本大学医学部付属板橋病院皮膚科病棟医長の葉山惟大医師に聞いた。

「蕁麻疹は、薬なしで症状が出ないようにできる『治る』病気です」

 ただし、念頭に置いておくべきことがある。蕁麻疹はゆっくり治療していく病気で、薬なしで症状が出ないようになるまでには、時間がかかるということだ。

 蕁麻疹は、5人に1人が生涯に経験するといわれている。

「蕁麻疹というと、食物アレルギーがよく知られています。特定の刺激や負荷で皮疹を誘発する蕁麻疹を刺激誘発型の蕁麻疹といい、食物アレルギーのほか、汗による蕁麻疹(コリン性蕁麻疹)、日光蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、などがありますが、原因が特定できるこれらの蕁麻疹は全体の3割ほど。蕁麻疹の7割は原因不明の特発性蕁麻疹で、その半数が、症状が6週間以上続く慢性特発性蕁麻疹になります」

 蕁麻疹の治療では、まず、刺激誘発型か特発性かの分類が重要になる。葉山医師は初診患者には問診に30分ほど時間をかけ、症状がいつから始まったか、どういう時に起こったか、飲んでいる薬はないか、職種や趣味など、詳細に聞く。

「問診で蕁麻疹の原因を特定できれば、その原因を避けてもらいます。一方、原因を特定できない場合は、検査は行わず、薬の治療に進みます」

 治療は効き目に応じて3段階に分かれる。第1目標は「薬で症状を出ないようにする」、最終目標は「薬なしで症状が出ないようにする」だ。

■自己判断による対処は再発リスクを高める

 ステップ1は、抗ヒスタミン剤。花粉症などにも使う薬で、第1世代と第2世代があり、蕁麻疹には眠気などの副作用が少ない非鎮静性第2世代抗ヒスタミン剤を使う。

「通常量で効き目が不十分なら、ほかの抗ヒスタミン剤へ変更、または増量や2種類の併用で2週間程度様子を見ます」

 それでも症状を抑えられなければ、ステップ2だ。H2―拮抗薬、抗ロイコトリエン薬などを、ステップ1の薬に追加する。H2―拮抗薬は胃痛や胃もたれに、抗ロイコトリエンは鼻炎に使われる薬で、蕁麻疹には保険適用外。専門医と相談の上、使うことになる。

「いずれも効果がなければ、ステップ3に進みます。生物学的製剤のオマリズマブ、シクロスポリン、内服の副腎皮質ステロイドのいずれかの使用がガイドラインに掲載されています」

 ただし、シクロスポリンは保険適用外で、副腎皮質ステロイドは1カ月以内に減量または中止のめどが立たなければ、他の治療へ変更を検討するとされている。

「私は主にオマリズマブを使います。月1回の皮下注射で、非常に効き目が良く、3回の投与で6割ほどの患者がコントロール良好となります。重篤な副作用は、当院では出ていません」

 薬で症状が出ない状態が3カ月程度続いたら、今度は薬の量、飲む頻度を減らしていく。

「たとえば抗ヒスタミン剤なら、2粒で3カ月間症状が出なければ、1日1粒に減らします。そのまま2~4週間ほど症状が出なければ、2日で1粒で2~4週間。次に3日で1粒で2~4週間……と時間をかけて減らしていきます。途中で症状が出たら、薬の量を少し増やしたり飲む頻度を短くします。ステップ2もステップ3も、時間をかけて薬を減らしていく方法は同じです。いきなり薬をやめると再発しやすいので注意が必要です」

 この方法で、重症患者も9割の人が良くなるという。蕁麻疹とおさらばできるのだ。

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