コロナ第3波に備える最新知識

専門家が提言「Go To」を批判する人はウイルスを知らない

札幌は「Go To トラベル」除外に
札幌は「Go To トラベル」除外に(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染拡大にまたぞろ人的交流の制限、ロックダウン論が首をもたげてきた。そもそもいったん世界中に感染拡大したウイルス感染症は、簡単には撲滅できない。この間、世界各国が行ったロックダウンが一時的効果しかないことは明らか。それなのに今の日本の状態で人の移動の制限をすることに意味があるのか? 京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。

「何度も申し上げていますが、Go Toのせいにするのは筋違いであり、それを理由にしていては本当の感染対策がおろそかになり逆効果です。いま、感染者数が増えている主な理由は、①コロナウイルスの活動が活発な冬を迎えたこと、②個々人が基本的なウイルス対策を守らないからです」

 宮沢准教授はこの道33年のベテラン獣医ウイルス学者。犬や猫、猿のウイルスを中心に、地道に33年間研究を行い、これまで扱ってきたウイルスは人獣共通感染症ウイルスも含めて、優に50種を超える。大学では、ウイルス学、人獣共通感染症学、公衆衛生学の講義を担当してきた。

 しかし、宮沢准教授を含めてウイルス研究者が新型コロナの感染を怖がることはない。それはウイルスのことを知り、感染対策の基本を守っていれば感染リスクはほとんどないと知っているからだ。

「新型コロナについては『手洗い』『マスク』『3密回避』『換気』『飲食時の大声や大皿禁止』などが対策の基本です。これをしっかり守っていればそうそう感染することはありません」

 それなのにその程度では心配だ、なんて言う人が増えているのはおかしなことだ。これは基本ができていない受験生がもっと高度な解法を教えてくれ、といっているようなもの。一般の人が、病人が大勢いて基礎疾患のある人がたくさんいる病院の感染対策をマネして完璧な感染予防をする必要はない。基本的なことを守っていれば感染リスクは大幅に減らせるし、旅行をしようが会食しようが、ウイルスのことを理解し、簡単な対策を行っていれば問題ないのだ。

■冬はウイルスが長く生存し、人間の免疫力は低下する

 いまウイルスで知っておくべきことは夏と違って冬のウイルスは環境中に長く生存し、空気が乾燥して飛沫が漂いやすくなるということと、人間の免疫力が寒さで低下するということだ。

「寒くなるとウイルスは付着しても死ににくくなるので接触感染の機会が増えます。空気中に漂う飛沫が乾燥して微細粒子となるので、肺の奥に吸い込みやすくなる。だから少ない量で感染が成立したり重症化しやすくなる。また、寒くなると人間の細胞の抗ウイルス力が低下するので、例えばこれまでは100個の感染性ウイルスで感染していたことが50個で感染するかもしれないのです。つまり、冬はウイルスが安定しているのにプラスして、人がウイルスに弱くなる。これに気の緩みで感染予防の基本を守らない人が多くなったから、感染者数が増えているのです。Go Toは犯人ではありません。むろん、東京でのウイルスの塩基配列と札幌のそれが類似しているため、東京から入ってきたのは事実でしょうが、もっと前から札幌に存在していたはずです。Go To前に入ってきて維持されて冬になって顕在化した可能性が高く、Go Toとの関係性の証拠と主張するのはおかしいです」

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